子どもたちのパラダイス

天気……うららかな日和のもと、小鳥たちは明るい声でさえずり、木の間や公園のなかのあちこちを自由に飛びまわりながら、春を迎えた喜びを謳歌していた。青い空に白い雲がぽつんぽつんと小舟のように浮かんでいて、東から西に向かってゆっくりと流れていた。

けさ早く、いつものように湖畔にそって歩いていると、向こうから老いらくさんがやってきた。
「おはようございます」
ぼくは老いらくさんに、あいさつをした。
「おはよう、笑い猫。今日は、いい天気だね」
老いらくさんが、ぼくにあいさつを返してくれた。
「そうですね。こんなに天気がよいときは、気持ちが浮き浮きして楽しくなります」
ぼくは老いらくさんに、そう言った。
「わしも同じだ」
老いらくさんがそう答えた。
「小鳥たちがたくさんさえずっていますから、今日は、ぼくに小鳥の鳴き声や名前を教えていただけませんか」
ぼくは老いらくさんに、そう言った。
「いいよ。ではこれから楠林のなかに行こう。この公園にいる鳥たちの多くは、楠林のなかをねぐらとしているから、たくさんの鳥たちの姿を見ることができるはずだ」
老いらくさんがそう言った。
「分かりました。ではこれからすぐに行きましょう」
ぼくはそう答えた。それからまもなく、ぼくと老いらくさんは楠林のなかに出かけていった。老いらくさんが言ったとおりに、楠林のなかに一歩足を踏み入れたとたんに木の上から、目覚めたばかりの小鳥たちのさわやかな声が聞こえてきた。
「あっ、あの茶色い鳥は何ですか?」
すぐ目の前にある高い木のてっぺん付近で鳴いていた小鳥の姿が、ぼくの目に入った。ぼくが指さした方を、老いらくさんはすぐに見て、しばらくじっと観察していた。
「あれはガビチョウだよ」
老いらくさんがそう教えてくれた。
「目の周りが白くて、白い筋が目の後ろのほうまで伸びているのが分かるか?」
老いらくさんが聞いた。それを聞いて、ぼくは、その鳥の顔の辺りをじっと見つめてから
「分かります」
と答えた。
「それがガビチョウの特徴だよ」
と教えてくれた。体はぽっちゃりしていて、少し太ってみえたが、ウグイスのようにきれいな声で鳴いていた。ガビチョウがとまっている木の隣りの木には、色鮮やかな緑色をした小鳥がとまっているのが見えた。のどの辺りは瑠璃色で、まるでブルーサファイアの首飾りをしているように見えた。老いらくさんに聞くと
「あの鳥はルリノドハチクイという鳥だ」
と教えてくれた。その隣りの木には、カラスのような黒い鳥がとまっていた。くちばしと目の周りは黄色だったから、カラスではないと思って、ぼくは老いらくさんに聞いた。すると老いらくさんが
「あれはクロウタドリという鳥で、カラスではなくてツグミの仲間だ」
と教えてくれた。
ぼくが老いらくさんと小鳥の話をしていると、ぼくの子どもたちが楠林のなかにやってくるのが見えた。それに気がついて、ぼくは老いらくさんに
「早く隠れて」
と言った。老いらくさんは今はボールのなかに入っていなかったから、ぼくの子どもたちにネズミがいることを気づかれたら大変なことになると思ったからだ。ぼくの言葉を聞いて、老いらくさんは、楠の木のうろのなかに、姿をさっと隠した。間一髪だった。そのすぐあとから、ぼくの子どもたちが、ぼくのすぐ近くまで駆け寄ってきた。
「お父さん、こんなところにいたの」
パントーがびっくりしたような顔をしていた。
「お父さんはサーカスの技を学ばないのに、どうして、ここにきているの」
アーヤーがけげんそうな顔をしていた。ぼくは子どもたちに
「バードウォッチングに来たのだ」
と答えた。するとサンパオが小首をかしげながら
「バードウォッチングって何?」
と聞き返してきた。
「野鳥を観察することだよ」
ぼくは子どもたちにそう答えた。するとパントーが
「この楠林のなかには野鳥がたくさんいるの?」
と聞いた。
「いるよ。たくさんいる」
ぼくはそう答えた。するとアーヤーが
「どんな野鳥がいるの?」
と聞いた。ぼくは、老いらくさんが先ほど教えてくれたことを、子どもたちに話した。すると子どもたちが興味深そうな顔をしていた。
「へえー、この翠湖公園には、いろいろな野鳥が住んでいるのだなあ」
サンパオが感心したような顔をしながら、つぶやくように、そう言った。
「一口に野鳥と言っても、大きさや形や色や鳴き声が様々だから、興味を抱き始めたら興味が尽きることはないよ」
ぼくは子どもたちにそう答えた。
「お父さんは野鳥のことに詳しいの?」
アーヤーが聞いた。ぼくはそれを聞いて、正直に首を横に振った。
「実を言うと、父さんもあまり詳しいことは知らない。父さんの親友が教えてくれた知識の受け売りをしているだけだ」
ぼくは子どもたちにそう言った。するとアーヤーが
「それでもすごいわ。わたしも、これから練習が終わったあとに、すぐにうちには帰らないで、しばらくここにとどまって、野鳥の鳴き声を聞いてから帰ることにしようかしら」
と言った。それを聞いてパントーが
「野鳥の鳴き声はとてもきれいだから、練習で疲れた心と体を優しく癒やしてくれるかもしれない」
と言った。するとサンパオが
「オウムは野鳥ではないの?」
と聞いた。
「もともとは野鳥だけども、音真似や声真似ができるようにするためには、人が飼って訓練しなければならない」
ぼくはそう答えた。それを聞いてサンパオがうなずいていた。
それからまもなくスイカ―が、うろのなから出てきた。ぼくの子どもたちがそれに気がついて、スイカ―にさっと駆け寄っていった。スイカ―が子どもたちに
「おはよう」
と言った。子どもたちは、きょとんとしたような顔をしていたので、ぼくは子どもたちに朝のあいさつの言葉であることを教えてやった。スイカ―は、そのあとぼくや、ぼくの子どもたちに食べ物を分けてくれた。それからまもなくスイカ―が子どもたちに
「さあ、今日も練習を頑張ろう」
と言った。言葉の意味を、ぼくは子どもたちに伝えた。すると子どもたちが気合を入れていた。しばらくしてからスイカ―の指導のもとで、子どもたちの練習が始まった。サンパオの一輪車乗りはかなり上手になっていた。パントーも火の輪くぐりができるようになっていた。アーヤーの空中綱渡りも一番高いところに張ってある地上五メートルの高さの綱を渡ることができるようになっていた。子どもたちはみんな上達したことを知って、みんな晴れ晴れとした顔をしていた。それを見て、ぼくもとてもうれしくなった。ことわざに『种瓜得瓜,种豆得豆(したことには相応した結果が得られる)』というものがあるが、ぼくは今、そのことわざのことをふっと思い出していた。