天気……いよいよ興行の当日がやってきた。昨日、ぼくは夜寝る前に、今日は好天に恵まれることを願っていた。ぼくの願いが神様に通じたのか、今日は朝から雲一つない青空が高く広がっていた。
興行は午後の二時半からおこなわれることになっていた。興行に出る動物たちはスイカ―といっしょに午前中、最終的な技の確認をおこなっていた。
午後の一時を過ぎたころから、子どもたちが次々と楠林の近くにある広場に集まってきた。好奇心に駆られて、大人も何人かやってきた。でもスイカ―が広場の前で立ちはだかって、十五歳以上の人は広場のなかに入れなかったから、大人たちは渋々と引き返していった。
二時になったとき、広場のなかは子どもたちでいっぱいになっていて、立錐の余地もないほどだった。そのなかに馬小跳や馬小跳の親友の唐飛たちもいた。馬小跳のいとこの杜真子もいた。
興行に出演する動物たちはスイカ―といっしょに、ステージのそでで静かに待機しながら
開演の時間を待っていた。スイカ―は黒旋風の背中の上に乗っていて、腕時計をちらちらと見ていた。スイカ―がかぶっているシルクハットの上にはオウムがとまっていて、のどをごろごろ鳴らしながら、最後の最後まで調整に余念がなかった。ぼくの子どもたちは少し緊張していたので
「あがらないで、これまで練習に励んできた技を、落ち着いて出せば、きっとうまくいくよ」
と言って励ましてやった。ぼくはそのあと老いらくさんに
「子どもたちへの協力をよろしくお願いします」
と言った。すると老いらくさんが、ボールのなかで、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら
「分かった」
というサインを送った。
ぼくは今日のサーカスには出演しないが、サーカスの進行係を務めることになった。スイカ―が言った指示を動物に伝えたり、動物同士のコミュニケーションをおこなうためには、人の言葉が分かったり、動物の言葉が話せるぼくにしかできない仕事だったからだ。
それからまもなく、いよいよ開演の時間がやってきた。スイカ―がぼくに鈴を渡して
「これを鳴らしなさい」
と言ったから、ぼくは口にくわえて鈴を鳴らした。それを合図にスイカ―が黒旋風に乗ったまま、さっそうとした姿で子どもたちの前に姿を現した。それを見て、子どもたちから割れんばかりの大歓声があがった。黒旋風の子どもたちが、大歓声に興奮して、自分たちもそのあとすぐにステージの上に駆けだしていこうとした。ぼくはそれを見て慌てて制止した。黒旋風の子どもたちの出番はまだだったからだ。ステージの上に姿を現したスイカ―はまるで大勝利をおさめて国へ帰ってきたばかりの凱旋将軍のように勇ましい姿で黒旋風の上にまたがっていて、とてもかっこよく見えた。スイカ―を乗せている黒旋風も、たくましくて、とてもかっこよく見えた。
「まるで『西遊記』のなかに出てくる猪八戒みたいだ」
という子どもがいた。猪八戒というのは、黒豚の妖怪で、もともとは天界に住んでいた豚だった。ところが天界で嫦娥(月に住むという伝説上の仙女)を口説こうとしたために地上へ追放されて黒豚の姿となって生まれてきたと言われている。黒旋風に不思議な力が備わっているのは、もしかしたら、先祖をたどっていったら猪八戒に行きつくからかもしれないと、ぼくはこのとき思った。
それからまもなくスイカ―がかぶっていた赤いシルクハットの帽子の上で、オウムが歌を歌い始めた。ベートーヴェンの『歓喜の歌』を中国語で歌っていた。この歌は、子どもたちが学校で習う歌なので、誰でもよく知っていたから、子どもたちは楽しい気持ちになって、オウムといっしょに歌い始めた。子どもたちの大合唱は公園のなかの遠くまで響きわたっていた。
合唱が終わったときに、スイカ―が、子どもたちに
「みなさん、楽しいですか」
と聞いていた。
「楽しいです」
子どもたちが異口同音に、そう答えていた。それを聞いて、スイカ―は相好を崩しながら
「そうですか。それはよかったです。今度はもっと楽しい気持ちにしてあげましょう。準備をしてきますから、ちょっと待っていてください」
と言って、それからまもなく、黒旋風に乗ったまま、ステージのそでに消えていった。子どもたちがしばらく待っていると、やがてステージの上にスイカ―と、荷車を引いた黒旋風の姿が現れた。荷車の上には、黒旋風の子どもたちが全部で八匹乗っていた。スイカ―が子どもたちに向かって
「お待たせしました。これから子豚たちが芸を披露します」
と言っていた。子どもたちはそれを聞いて、どんな芸を見せてくれるのだろうと思って、みんな、わくわくしたような顔をしながら子豚たちを見ていた。
「これから子豚たちが前方宙返りを披露します。一匹ずつジャンプして、空中で一回転してからお父さんの背中の上に着地します。そのあと今度はバック転をして、荷車の上に戻ります」
スイカ―がそう言っていた。それを聞いて、子どもたちは、びっくりしたような顔をしていた。
それからまもなく子豚たちの演技が始まった。どの子豚もまるで体操選手のように機敏な動作で、前方宙返りとバック転の技を披露していた。豚にこんなことができるはずがないと、ぼくはこれまで思っていたので、子豚たちの意外な才能を知って感心していた。もしかしたら、黒旋風の子どもたちが持っていた潜在能力をスイカ―が、わずか一日の訓練で、引き出したのではないかと、ぼくは思った。八匹の子豚たちが技を決めるたびに、見ている子どもたちは歓声をあげながら楽しそうに拍手を送っていた。技に失敗して下に落ちる子豚は一匹もいなかった。子豚たちの演技が終わったあと、スイカ―が子どもたちに
「どうでしたか。面白かったですか」
と聞いていた。
「面白かったです」
子どもたちが異口同音に、そう答えていた。それを聞いてスイカ―が、にっこりしながら
「そうですか。よかったです。では今度は子猫たちによる演技をお見せします」
と言っていた。それを聞いて、いよいよ、ぼくの子どもたちの出番がやってきたと、ぼくは思った。最初に登場したのはサンパオだった。老いらくさんがなかに入っているボールを、ころころと転がしながら出てきた。スイカ―が
「みなさん、この子猫が玉乗りを披露します。ボールの上に立って二回転ジャンプをしてから、またボールの上に着地します。うまくいったら盛大な拍手をしてください」
と言っていた。それを聞いて、子どもたちは、うなずいていた。
それからまもなくサンパオが演技を始めた。ボールの上に乗ると、一瞬、止まって呼吸を整えてから、高く飛び上がった。そして空中で二回転してから、ボールの上に見事に着地することに成功した。それを見て、子どもたちは歓声をあげて、そのあと大きな拍手を送っていた。次に登場したのはパントーとアーヤーだった。スイカ―が
「みなさん、このペアの子猫は空中でヘディングパスをします。見てください」
と言っていた。ボールが空中にあがって下に落ちてきたところをパントーがジャンプして頭で受け止めてアーヤーにパスしていた。アーヤーはそれを見てジャンプして頭で受け止めてからパントーにパスしていた。息がぴったり合っていて、受けそこなって下に落とすことなく、五回、六回と、パスが続いていた。それを見て、子どもたちは驚喜していた。スイカ―はそのあと子どもたちに
「今度は、この猫が空中飛びを披露します」
と言っていた。ぼくはそれを聞いて、アーヤーにスイカ―が言った言葉の意味を伝えた。するとアーヤーはうなずいてから、広場のすぐ後ろにある楠の木のところまで駆けていって、木の枝に登り始めた。子どもたちの注視のなか、アーヤーは十メートルぐらいの高さまで登ると、両手両足を開いて、十五メートルぐらい飛んで、隣の木の枝まで飛び移ることに見事に成功した。それを見ていた子どもたちの間から
「すごい。まるでムササビみたいだ」
という声があがっていた。スイカ―はそのあと子どもたちに
「次は犬のカップルに登場してもらいます」
と言って、フェイナとシャオパイをステージの上に登場させた。
「この犬のカップルはワルツを踊ることができます」
スイカ―が子どもたちに、そう言って紹介していた。それからまもなくスイカ―はかぶっているシルクハットに軽く手を当てて、オウムに合図を送っていた。するとオウムが合図に答えるようにショパンの『子犬のワルツ』を歌い出した。フェイナとシャオパイは、その歌を聞いて、ワルツのステップを踏みながら、お互いの手を取り合って優雅にダンスを踊り始めた。フェイナとシャオパイは息がぴったり合っていて、とても楽しそうに踊っていた。それを見て、子どもたちはワルツの美しさに酔いしれていた。子どもたちのなかには見るだけでは物足りなくなったのか、男の子と女の子が手を取り合って、フェイナとシャオパイの真似をしながら踊り出す子どももいた。こうして子どもたちは時間が経つのも忘れるくらいに、昼下がりのひとときを楠林の近くにある広場のなかで楽しく過ごしていた。
興行は午後の二時半からおこなわれることになっていた。興行に出る動物たちはスイカ―といっしょに午前中、最終的な技の確認をおこなっていた。
午後の一時を過ぎたころから、子どもたちが次々と楠林の近くにある広場に集まってきた。好奇心に駆られて、大人も何人かやってきた。でもスイカ―が広場の前で立ちはだかって、十五歳以上の人は広場のなかに入れなかったから、大人たちは渋々と引き返していった。
二時になったとき、広場のなかは子どもたちでいっぱいになっていて、立錐の余地もないほどだった。そのなかに馬小跳や馬小跳の親友の唐飛たちもいた。馬小跳のいとこの杜真子もいた。
興行に出演する動物たちはスイカ―といっしょに、ステージのそでで静かに待機しながら
開演の時間を待っていた。スイカ―は黒旋風の背中の上に乗っていて、腕時計をちらちらと見ていた。スイカ―がかぶっているシルクハットの上にはオウムがとまっていて、のどをごろごろ鳴らしながら、最後の最後まで調整に余念がなかった。ぼくの子どもたちは少し緊張していたので
「あがらないで、これまで練習に励んできた技を、落ち着いて出せば、きっとうまくいくよ」
と言って励ましてやった。ぼくはそのあと老いらくさんに
「子どもたちへの協力をよろしくお願いします」
と言った。すると老いらくさんが、ボールのなかで、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら
「分かった」
というサインを送った。
ぼくは今日のサーカスには出演しないが、サーカスの進行係を務めることになった。スイカ―が言った指示を動物に伝えたり、動物同士のコミュニケーションをおこなうためには、人の言葉が分かったり、動物の言葉が話せるぼくにしかできない仕事だったからだ。
それからまもなく、いよいよ開演の時間がやってきた。スイカ―がぼくに鈴を渡して
「これを鳴らしなさい」
と言ったから、ぼくは口にくわえて鈴を鳴らした。それを合図にスイカ―が黒旋風に乗ったまま、さっそうとした姿で子どもたちの前に姿を現した。それを見て、子どもたちから割れんばかりの大歓声があがった。黒旋風の子どもたちが、大歓声に興奮して、自分たちもそのあとすぐにステージの上に駆けだしていこうとした。ぼくはそれを見て慌てて制止した。黒旋風の子どもたちの出番はまだだったからだ。ステージの上に姿を現したスイカ―はまるで大勝利をおさめて国へ帰ってきたばかりの凱旋将軍のように勇ましい姿で黒旋風の上にまたがっていて、とてもかっこよく見えた。スイカ―を乗せている黒旋風も、たくましくて、とてもかっこよく見えた。
「まるで『西遊記』のなかに出てくる猪八戒みたいだ」
という子どもがいた。猪八戒というのは、黒豚の妖怪で、もともとは天界に住んでいた豚だった。ところが天界で嫦娥(月に住むという伝説上の仙女)を口説こうとしたために地上へ追放されて黒豚の姿となって生まれてきたと言われている。黒旋風に不思議な力が備わっているのは、もしかしたら、先祖をたどっていったら猪八戒に行きつくからかもしれないと、ぼくはこのとき思った。
それからまもなくスイカ―がかぶっていた赤いシルクハットの帽子の上で、オウムが歌を歌い始めた。ベートーヴェンの『歓喜の歌』を中国語で歌っていた。この歌は、子どもたちが学校で習う歌なので、誰でもよく知っていたから、子どもたちは楽しい気持ちになって、オウムといっしょに歌い始めた。子どもたちの大合唱は公園のなかの遠くまで響きわたっていた。
合唱が終わったときに、スイカ―が、子どもたちに
「みなさん、楽しいですか」
と聞いていた。
「楽しいです」
子どもたちが異口同音に、そう答えていた。それを聞いて、スイカ―は相好を崩しながら
「そうですか。それはよかったです。今度はもっと楽しい気持ちにしてあげましょう。準備をしてきますから、ちょっと待っていてください」
と言って、それからまもなく、黒旋風に乗ったまま、ステージのそでに消えていった。子どもたちがしばらく待っていると、やがてステージの上にスイカ―と、荷車を引いた黒旋風の姿が現れた。荷車の上には、黒旋風の子どもたちが全部で八匹乗っていた。スイカ―が子どもたちに向かって
「お待たせしました。これから子豚たちが芸を披露します」
と言っていた。子どもたちはそれを聞いて、どんな芸を見せてくれるのだろうと思って、みんな、わくわくしたような顔をしながら子豚たちを見ていた。
「これから子豚たちが前方宙返りを披露します。一匹ずつジャンプして、空中で一回転してからお父さんの背中の上に着地します。そのあと今度はバック転をして、荷車の上に戻ります」
スイカ―がそう言っていた。それを聞いて、子どもたちは、びっくりしたような顔をしていた。
それからまもなく子豚たちの演技が始まった。どの子豚もまるで体操選手のように機敏な動作で、前方宙返りとバック転の技を披露していた。豚にこんなことができるはずがないと、ぼくはこれまで思っていたので、子豚たちの意外な才能を知って感心していた。もしかしたら、黒旋風の子どもたちが持っていた潜在能力をスイカ―が、わずか一日の訓練で、引き出したのではないかと、ぼくは思った。八匹の子豚たちが技を決めるたびに、見ている子どもたちは歓声をあげながら楽しそうに拍手を送っていた。技に失敗して下に落ちる子豚は一匹もいなかった。子豚たちの演技が終わったあと、スイカ―が子どもたちに
「どうでしたか。面白かったですか」
と聞いていた。
「面白かったです」
子どもたちが異口同音に、そう答えていた。それを聞いてスイカ―が、にっこりしながら
「そうですか。よかったです。では今度は子猫たちによる演技をお見せします」
と言っていた。それを聞いて、いよいよ、ぼくの子どもたちの出番がやってきたと、ぼくは思った。最初に登場したのはサンパオだった。老いらくさんがなかに入っているボールを、ころころと転がしながら出てきた。スイカ―が
「みなさん、この子猫が玉乗りを披露します。ボールの上に立って二回転ジャンプをしてから、またボールの上に着地します。うまくいったら盛大な拍手をしてください」
と言っていた。それを聞いて、子どもたちは、うなずいていた。
それからまもなくサンパオが演技を始めた。ボールの上に乗ると、一瞬、止まって呼吸を整えてから、高く飛び上がった。そして空中で二回転してから、ボールの上に見事に着地することに成功した。それを見て、子どもたちは歓声をあげて、そのあと大きな拍手を送っていた。次に登場したのはパントーとアーヤーだった。スイカ―が
「みなさん、このペアの子猫は空中でヘディングパスをします。見てください」
と言っていた。ボールが空中にあがって下に落ちてきたところをパントーがジャンプして頭で受け止めてアーヤーにパスしていた。アーヤーはそれを見てジャンプして頭で受け止めてからパントーにパスしていた。息がぴったり合っていて、受けそこなって下に落とすことなく、五回、六回と、パスが続いていた。それを見て、子どもたちは驚喜していた。スイカ―はそのあと子どもたちに
「今度は、この猫が空中飛びを披露します」
と言っていた。ぼくはそれを聞いて、アーヤーにスイカ―が言った言葉の意味を伝えた。するとアーヤーはうなずいてから、広場のすぐ後ろにある楠の木のところまで駆けていって、木の枝に登り始めた。子どもたちの注視のなか、アーヤーは十メートルぐらいの高さまで登ると、両手両足を開いて、十五メートルぐらい飛んで、隣の木の枝まで飛び移ることに見事に成功した。それを見ていた子どもたちの間から
「すごい。まるでムササビみたいだ」
という声があがっていた。スイカ―はそのあと子どもたちに
「次は犬のカップルに登場してもらいます」
と言って、フェイナとシャオパイをステージの上に登場させた。
「この犬のカップルはワルツを踊ることができます」
スイカ―が子どもたちに、そう言って紹介していた。それからまもなくスイカ―はかぶっているシルクハットに軽く手を当てて、オウムに合図を送っていた。するとオウムが合図に答えるようにショパンの『子犬のワルツ』を歌い出した。フェイナとシャオパイは、その歌を聞いて、ワルツのステップを踏みながら、お互いの手を取り合って優雅にダンスを踊り始めた。フェイナとシャオパイは息がぴったり合っていて、とても楽しそうに踊っていた。それを見て、子どもたちはワルツの美しさに酔いしれていた。子どもたちのなかには見るだけでは物足りなくなったのか、男の子と女の子が手を取り合って、フェイナとシャオパイの真似をしながら踊り出す子どももいた。こうして子どもたちは時間が経つのも忘れるくらいに、昼下がりのひとときを楠林の近くにある広場のなかで楽しく過ごしていた。

