天気……空に薄雲がかかり、ごろごろと春雷が鳴った。冬の間、休眠していた草木の芽に刺激を与えたり、冬ごもりをしていた虫や動物たちをびっくりさせて、目を覚まさせるために鳴っているように、ぼくの耳には聞こえた。
けさ早く、外がまだ明るくなっていないときに、外で大きな音がしたので、ぼくはびっくりして目を覚ました。妻猫も子どもたちも目を覚ました。
(何だろう?)
と思って、ぼくはおそるおそる、うちの出入口のほうへいった。すると雷が鳴っていることが分かった。妻猫が、不安そうな声で
「お父さん、何の音だった?」
と聞いてきた。
「雷の音だった。今日は二十四節気のなかの啓蟄だから、眠っていた植物や動物を目覚めさせるために神様が呼びかけているのではないかと、ぼくは思っている」
ぼくは妻猫に、そう答えた。すると妻猫が
「啓蟄って何ですか」
と聞いてきた。
「寒くて、これまで穴や土のなかでじっと冬ごもりをしていた動物や虫たちが、もぞもぞと出てくる日のことだ」
ぼくは妻猫にそう答えた。すると妻猫が興味深そうな顔をしながら
「どんな動物や虫たちが出てくるのですか」
と聞いてきた。
「クマ、ヤマネ、リス、コウモリ、ハリネズミなどが穴から出てくる。カエル、ヘビ、カメなども冬眠から覚めて出てくる」
ぼくは妻猫にそう言った。するとそれを聞いて妻猫が
「そうですか。そんなにいろいろな動物が冬眠するとは知らなかったわ」
と言って、びっくりしたような顔をしていた。子どもたちも目を丸くしながら、ぼくの話に聞き入っていた。アーヤーが
「冬眠する動物は何か月ぐらい寝ているのですか」
と聞いてきた。
「動物の種類によって違うけど、大体、三か月ぐらいは寝ている」
ぼくはアーヤーにそう答えた。するとアーヤーが
「その間、食べたり飲んだり、まったくしないのですか」
とさらに聞いてきた。
「そうだよ」
ぼくはそう答えた。するとアーヤーが
「よくそれで生きられますね。おなかはすかないのかしら」
と聞いてきた。
「冬眠に入る前に、食べ物をたくさん食べて肥満状態になってから寝るから、長期間、食べたり飲んだりしなくても生きられるのだ。むろん寝ていても生きている以上は、体のなかに栄養素が吸収されていくから、冬眠明けの動物たちの体重は、ほとんどの場合、半分近くまで減っている。おなかがすいていないことはないと思う」
ぼくはアーヤーにそう答えた。ぼくはこのとき、万年亀のことがふっと頭に浮かんだ。万年亀は不思議な魔力を持った特別な亀だから、普通の亀と同じように冬眠をするのだろうかと思ったからだ。この前、楠林のなかで万年亀に会ったとき、春雷がなったころに楠林にやってくると言っていたから、もしかしたら今日、楠林のなかに再びやってくるかもしれない。ぼくはそう思った。万年亀は約束したことは必ず守る亀だから、ぼくは居ても立ってもいられなくなったので、すぐに楠林のなかにいってみることにした。外はまだ明るくなっていなかったが
「ぼくは、これからちょっと出かけてくる」
と妻猫に言った。すると妻猫が、けげんそうな顔をしながら
「散歩に出かけるのだったら、もう少し待って、太陽が顔を出してからいったらいいじゃないですか」
と言った。ぼくはそれを聞いて首を横に振った。ぼくは妻猫に万年亀のことを話した。すると妻猫が
「そうだったの。そういう約束をされたのだったら、今日はいらっしゃるかもしれないわね」
と答えていた。
「万年亀は来るときはいつも、夜陰にまぎれるようにして、前夜のうちに来るから、もしかしたらもう来ているかもしれないと、ぼくは思っている」
ぼくは妻猫にそう言った。すると妻猫が
「分かりました。では気をつけていってらっしゃい」
と答えた。ぼくはうなずいてから、うちを出た。ぼくが楠林の前に着いてからまもなく、楠林のなかから
「笑い猫」
と呼びかけられたので、ぼくはびっくりして、声がしたほうを見た。するとやはり、ぼくが思っていたとおりだった。万年亀の大先生が、楠林のなかから、ぬっと姿を現して、ぼくのほうに近づいてくるのが見えた。
「大先生、やはり、いらっしゃったのですね」
ぼくは声を弾ませながら、万年亀にそう言った。すると万年亀が
「春雷が鳴ったときにここに来ると言ったではないか」
と、ぼくに言った。ぼくはそれを聞いて
「覚えています。だからぼくも一刻も早く、大先生に再会したいと思って、夜がまだ明けないうちに、うちを出て、ここへやってきました」
と答えた。すると万年亀が
「今日は、わしだけでなくて黒旋風と、その子どもたちも連れてきた」
と言った。よく見ると、万年亀の後ろに黒い影のようなものが、もぞもぞと動いているのが見えた。黒旋風というのは、以前、ぼくの親友だった黒豚で、今は深い山のなかで家族といっしょに暮らしている豚のことだ。普通の豚とは違って、すごい才能を持っていて、馬のように速く走ったり、重い荷物を載せて運ぶことができる超能力豚だ。雪豚という名前の白豚と結婚して、たくさんの子どもが生まれて、子どもはすべて白と黒のまだら模様がある斑点豚ばかりだった。ぼくは黒旋風と久しぶりに会えたので、とてもうれしく思っていた。黒旋風の子どもたちも、しばらく見ないうちに、ずいぶん大きくなっていた。ぼくは黒旋風に
「元気そうで何よりです」
と言って、笑みを浮かべながら、あいさつをした。すると黒旋風が
「笑い猫も元気そうでよかった」
と、明るい顔で、あいさつを返してくれた。ぼくはそのあと黒旋風に
「とてもいいときに来てくれました。明日、ここでサーカスの興行がありますから、見にくる子どもたちを楽しませていただけませんか」
と言った。すると黒旋風が
「サーカスって何?」
と聞き返してきた。ぼくは黒旋風にサーカスのことを説明してあげた。すると黒旋風が
「ぼくは何をすればいいの?」
と聞いた。
「人を乗せて走ったり、荷車を引いてものを運べば、見ている人は楽しくなると思います」
ぼくは黒旋風にそう答えた。
「ぼくの子どもたちは何をすればいいの?」
黒旋風が聞いた。
「……」
ぼくにはすぐにはよい答が思い浮かばなかった。
それからしばらくしてから楠の木の上から、小鳥の鳴き声が聞こえてきた。夜が明けたのを知って、小鳥たちがさわやかな声で、朝を迎えた喜びの歌を歌っていた。そこへオウムがやってきて、小鳥たちの美しい声に負けてはいられないとばかりに声を張り上げて、グリーグの『朝』や、チャイコフスキーの『朝の祈り』という曲を歌っていた。ぼくが杜真子に飼われていたころ、朝、目覚まし時計のなかから、これらの曲がオルゴールの音として鳴って、起床の時間が来たことを杜真子に知らせていたので、どちらも聞き馴染みのある曲だった。オウムの歌を聞きながら、ぼくは、スイカ―のことを思い出した。ぼくは黒旋風に
「あのオウムを訓練して、あんなに上手に歌えるようにしたスイカ―というピエロがいます。スイカ―は、ぼくの子どもたちや、ぼくの犬友にもいろいろな芸を教えています。スイカ―は動物の才能を引き出す天才ですから、きっと、あなたの子どもたちにも何か才能を見いだして芸を教えてくれるはずです」
と言った。それを聞いて黒旋風が
「そうか、それは楽しみだな」
と答えていた。
それからまもなくスイカ―が、木のうろのなかから出てくるのが見えたので、ぼくは黒旋風と、黒旋風の子どもたちを、スイカ―の前に連れていった。スイカ―は黒旋風や、黒旋風の子どもたちを見ると
「おー、何てかっこいい黒豚と、パンダのようにかわいい白黒の子豚たち……」
と言った。それを聞いて、ぼくはスイカ―が気に入ってくれてよかったと、ぼくは思った。スイカ―が言ったことを、ぼくは黒旋風に伝えた。すると黒旋風がうれしそうな顔をしていた。ぼくは黒旋風に
「スイカ―を背中に乗せて、ちょっと走ってくれませんか」
とお願いした。それを聞いて黒旋風が
「分かった、そうするよ」
と答えた。黒旋風がしゃがんだのを見て、スイカ―は意味を理解して黒旋風の背中に乗った。すると黒旋風はすくりと立ち上がってから、勢いよく走り出して、またたくまに、ぼくの視野から消えていった。名前のとおりに、黒い旋風のような勢いだった。黒旋風の子どもたちや万年亀も、あっけにとられたような顔をしながら、黒旋風が出て行った先を見ていた。
「すごいな。豚とは思えないほどだ」
万年亀はそう言って、黒旋風を賞賛していた。しばらくしてから黒旋風が、先ほど出ていった方向とは反対の方向から戻ってきた。翠湖公園のなかを一周してきたのではないかと、ぼくは思った。黒旋風の背中のなかから下りてきたスイカ―が
「この黒豚はたいしたものだ。この黒豚に教えることは、もう何もない。あとは子豚たちに何か芸を教えて子どもたちを楽しませることに専念しよう」
と言っていた。スイカ―はそのあと、黒旋風の子どもたちに、どんなことを教えようかと思って、いろいろと考えを巡らしてから、空中宙返りを教えることにして訓練を始めていた。その様子をしばらく見ていると、ぼくの子どもたちが老いらくさんといっしょにやってきて、明日のサーカスで披露する技の確認をおこなっていた。それを見ながら、万年亀が
「おまえの子どもたちもたいしたものだ」
といった。それを聞いて、ぼくはまんざらでもなかった。ぼくはそれからまもなく万年亀といっしょに楠林のなかから出ていった。
けさ早く、外がまだ明るくなっていないときに、外で大きな音がしたので、ぼくはびっくりして目を覚ました。妻猫も子どもたちも目を覚ました。
(何だろう?)
と思って、ぼくはおそるおそる、うちの出入口のほうへいった。すると雷が鳴っていることが分かった。妻猫が、不安そうな声で
「お父さん、何の音だった?」
と聞いてきた。
「雷の音だった。今日は二十四節気のなかの啓蟄だから、眠っていた植物や動物を目覚めさせるために神様が呼びかけているのではないかと、ぼくは思っている」
ぼくは妻猫に、そう答えた。すると妻猫が
「啓蟄って何ですか」
と聞いてきた。
「寒くて、これまで穴や土のなかでじっと冬ごもりをしていた動物や虫たちが、もぞもぞと出てくる日のことだ」
ぼくは妻猫にそう答えた。すると妻猫が興味深そうな顔をしながら
「どんな動物や虫たちが出てくるのですか」
と聞いてきた。
「クマ、ヤマネ、リス、コウモリ、ハリネズミなどが穴から出てくる。カエル、ヘビ、カメなども冬眠から覚めて出てくる」
ぼくは妻猫にそう言った。するとそれを聞いて妻猫が
「そうですか。そんなにいろいろな動物が冬眠するとは知らなかったわ」
と言って、びっくりしたような顔をしていた。子どもたちも目を丸くしながら、ぼくの話に聞き入っていた。アーヤーが
「冬眠する動物は何か月ぐらい寝ているのですか」
と聞いてきた。
「動物の種類によって違うけど、大体、三か月ぐらいは寝ている」
ぼくはアーヤーにそう答えた。するとアーヤーが
「その間、食べたり飲んだり、まったくしないのですか」
とさらに聞いてきた。
「そうだよ」
ぼくはそう答えた。するとアーヤーが
「よくそれで生きられますね。おなかはすかないのかしら」
と聞いてきた。
「冬眠に入る前に、食べ物をたくさん食べて肥満状態になってから寝るから、長期間、食べたり飲んだりしなくても生きられるのだ。むろん寝ていても生きている以上は、体のなかに栄養素が吸収されていくから、冬眠明けの動物たちの体重は、ほとんどの場合、半分近くまで減っている。おなかがすいていないことはないと思う」
ぼくはアーヤーにそう答えた。ぼくはこのとき、万年亀のことがふっと頭に浮かんだ。万年亀は不思議な魔力を持った特別な亀だから、普通の亀と同じように冬眠をするのだろうかと思ったからだ。この前、楠林のなかで万年亀に会ったとき、春雷がなったころに楠林にやってくると言っていたから、もしかしたら今日、楠林のなかに再びやってくるかもしれない。ぼくはそう思った。万年亀は約束したことは必ず守る亀だから、ぼくは居ても立ってもいられなくなったので、すぐに楠林のなかにいってみることにした。外はまだ明るくなっていなかったが
「ぼくは、これからちょっと出かけてくる」
と妻猫に言った。すると妻猫が、けげんそうな顔をしながら
「散歩に出かけるのだったら、もう少し待って、太陽が顔を出してからいったらいいじゃないですか」
と言った。ぼくはそれを聞いて首を横に振った。ぼくは妻猫に万年亀のことを話した。すると妻猫が
「そうだったの。そういう約束をされたのだったら、今日はいらっしゃるかもしれないわね」
と答えていた。
「万年亀は来るときはいつも、夜陰にまぎれるようにして、前夜のうちに来るから、もしかしたらもう来ているかもしれないと、ぼくは思っている」
ぼくは妻猫にそう言った。すると妻猫が
「分かりました。では気をつけていってらっしゃい」
と答えた。ぼくはうなずいてから、うちを出た。ぼくが楠林の前に着いてからまもなく、楠林のなかから
「笑い猫」
と呼びかけられたので、ぼくはびっくりして、声がしたほうを見た。するとやはり、ぼくが思っていたとおりだった。万年亀の大先生が、楠林のなかから、ぬっと姿を現して、ぼくのほうに近づいてくるのが見えた。
「大先生、やはり、いらっしゃったのですね」
ぼくは声を弾ませながら、万年亀にそう言った。すると万年亀が
「春雷が鳴ったときにここに来ると言ったではないか」
と、ぼくに言った。ぼくはそれを聞いて
「覚えています。だからぼくも一刻も早く、大先生に再会したいと思って、夜がまだ明けないうちに、うちを出て、ここへやってきました」
と答えた。すると万年亀が
「今日は、わしだけでなくて黒旋風と、その子どもたちも連れてきた」
と言った。よく見ると、万年亀の後ろに黒い影のようなものが、もぞもぞと動いているのが見えた。黒旋風というのは、以前、ぼくの親友だった黒豚で、今は深い山のなかで家族といっしょに暮らしている豚のことだ。普通の豚とは違って、すごい才能を持っていて、馬のように速く走ったり、重い荷物を載せて運ぶことができる超能力豚だ。雪豚という名前の白豚と結婚して、たくさんの子どもが生まれて、子どもはすべて白と黒のまだら模様がある斑点豚ばかりだった。ぼくは黒旋風と久しぶりに会えたので、とてもうれしく思っていた。黒旋風の子どもたちも、しばらく見ないうちに、ずいぶん大きくなっていた。ぼくは黒旋風に
「元気そうで何よりです」
と言って、笑みを浮かべながら、あいさつをした。すると黒旋風が
「笑い猫も元気そうでよかった」
と、明るい顔で、あいさつを返してくれた。ぼくはそのあと黒旋風に
「とてもいいときに来てくれました。明日、ここでサーカスの興行がありますから、見にくる子どもたちを楽しませていただけませんか」
と言った。すると黒旋風が
「サーカスって何?」
と聞き返してきた。ぼくは黒旋風にサーカスのことを説明してあげた。すると黒旋風が
「ぼくは何をすればいいの?」
と聞いた。
「人を乗せて走ったり、荷車を引いてものを運べば、見ている人は楽しくなると思います」
ぼくは黒旋風にそう答えた。
「ぼくの子どもたちは何をすればいいの?」
黒旋風が聞いた。
「……」
ぼくにはすぐにはよい答が思い浮かばなかった。
それからしばらくしてから楠の木の上から、小鳥の鳴き声が聞こえてきた。夜が明けたのを知って、小鳥たちがさわやかな声で、朝を迎えた喜びの歌を歌っていた。そこへオウムがやってきて、小鳥たちの美しい声に負けてはいられないとばかりに声を張り上げて、グリーグの『朝』や、チャイコフスキーの『朝の祈り』という曲を歌っていた。ぼくが杜真子に飼われていたころ、朝、目覚まし時計のなかから、これらの曲がオルゴールの音として鳴って、起床の時間が来たことを杜真子に知らせていたので、どちらも聞き馴染みのある曲だった。オウムの歌を聞きながら、ぼくは、スイカ―のことを思い出した。ぼくは黒旋風に
「あのオウムを訓練して、あんなに上手に歌えるようにしたスイカ―というピエロがいます。スイカ―は、ぼくの子どもたちや、ぼくの犬友にもいろいろな芸を教えています。スイカ―は動物の才能を引き出す天才ですから、きっと、あなたの子どもたちにも何か才能を見いだして芸を教えてくれるはずです」
と言った。それを聞いて黒旋風が
「そうか、それは楽しみだな」
と答えていた。
それからまもなくスイカ―が、木のうろのなかから出てくるのが見えたので、ぼくは黒旋風と、黒旋風の子どもたちを、スイカ―の前に連れていった。スイカ―は黒旋風や、黒旋風の子どもたちを見ると
「おー、何てかっこいい黒豚と、パンダのようにかわいい白黒の子豚たち……」
と言った。それを聞いて、ぼくはスイカ―が気に入ってくれてよかったと、ぼくは思った。スイカ―が言ったことを、ぼくは黒旋風に伝えた。すると黒旋風がうれしそうな顔をしていた。ぼくは黒旋風に
「スイカ―を背中に乗せて、ちょっと走ってくれませんか」
とお願いした。それを聞いて黒旋風が
「分かった、そうするよ」
と答えた。黒旋風がしゃがんだのを見て、スイカ―は意味を理解して黒旋風の背中に乗った。すると黒旋風はすくりと立ち上がってから、勢いよく走り出して、またたくまに、ぼくの視野から消えていった。名前のとおりに、黒い旋風のような勢いだった。黒旋風の子どもたちや万年亀も、あっけにとられたような顔をしながら、黒旋風が出て行った先を見ていた。
「すごいな。豚とは思えないほどだ」
万年亀はそう言って、黒旋風を賞賛していた。しばらくしてから黒旋風が、先ほど出ていった方向とは反対の方向から戻ってきた。翠湖公園のなかを一周してきたのではないかと、ぼくは思った。黒旋風の背中のなかから下りてきたスイカ―が
「この黒豚はたいしたものだ。この黒豚に教えることは、もう何もない。あとは子豚たちに何か芸を教えて子どもたちを楽しませることに専念しよう」
と言っていた。スイカ―はそのあと、黒旋風の子どもたちに、どんなことを教えようかと思って、いろいろと考えを巡らしてから、空中宙返りを教えることにして訓練を始めていた。その様子をしばらく見ていると、ぼくの子どもたちが老いらくさんといっしょにやってきて、明日のサーカスで披露する技の確認をおこなっていた。それを見ながら、万年亀が
「おまえの子どもたちもたいしたものだ」
といった。それを聞いて、ぼくはまんざらでもなかった。ぼくはそれからまもなく万年亀といっしょに楠林のなかから出ていった。

