天気…ここ数日、好天に恵まれて、樹木や草花が日ごとに青々としてきて、翠湖公園のなかには春らしい明るさがみなぎっていた。
ぼくは毎日、子どもたちを連れて楠林に行って、子どもたちの訓練の様子を見ていた。老いらくさんも、老体にむちうって、子どもたちの訓練に毎日つきあってくれた。今週の土曜日に再び、楠林の近くで楽しい興行が開かれるので、スイカ―は準備に向けて余念がなかった。ぼくの子どもたちは今回初めて、技を披露することになるので、見にくる子どもたちを楽しませようと思って張り切っていた。サンパオはボールの上に乗れるようになっていた。ボールの上でジャンプして、空中で一回転してから、ボールの上に着地することができるようになっていた。今は二回転ジャンプに取り組んでいた。パントーとアーヤーが取り組んでいたジャンプしながら頭でボールをパスをする練習も五往復までできるようになっていた。十往復まで伸ばすことを目標に頑張っていた。アーヤーが単独で取り組んでいたムササビ飛びも上達して、今は高さ七メートルぐらいの木の枝から八メートルぐらい飛んで、別の木に飛び移ることができるようになっていた。
子どもたちの訓練は午前中で終わり、午後はフェイナとシャオパイがやってきて、ダンスのレッスンを受けていた。夕方から夜にかけては、スイカ―はオウムにCDを聞かせながらワルツの旋律やリズムを教えていた。スイカ―はオウムに『子犬のワルツ』という曲を、繰り返し教えていた。ショパンという人が作った曲で、軽快で愛らしい旋律が特徴的な音楽で、よく知られている有名な曲だ。音が細かくて、スピード感にあふれていて、タイトル通り、子犬がうれしそうに走り回っているように聞こえる曲だから、フェイナとシャオパイという犬のペアが踊るには、うってつけの曲だった。
そのほか、スイカ―はウィンナー・ワルツの真骨頂である『美しき青きドナウ』や、チャイコフスキーという人が作った『花のワルツ』という曲の旋律やリズムも教えていた。スイカ―の音楽に対する造詣の深さもさることながら、懸命に覚え込んで自分のものにしようとしているオウムの音感の高さにも感心させられた。老いらくさんも、ぼくといっしょに、うっとりしたような顔をしながらオウムの音真似を聞いていた。すべての訓練が終わったあと、スイカ―は木の根元の近くにあるうろのなかに入っていった。オウムはそれよりも少し高いところにあるうろのなかに入っていった。スイカ―もオウムも、うろのなかで寝るのだろうと、ぼくは思った。
ぼくと老いらくさんは、そのあと楠林を出て、それぞれのうちへ帰り始めた。途中で老いらくさんが、感慨深そうな声で
「こんな日がこようとは、わしは夢にも思っていなかった」
と言った。ぼくには意味がよく分からなかったので
「どんな日ですか」
と、老いらくさんに聞き返した。
「嫌われ者のネズミが、みんなの前で跳んだりはねたりして楽しませる日だよ」
老いらくさんがそう言った。それを聞いて、ぼくは
「老いらくさんがネズミだと思って見る子どもは一人もいないはずです。ボールのなかに入っていて姿が見えないからです」
と言った。すると老いらくさんが
「そんなことはどうでもいいよ。これまでずっと人目を避けるように生きてきたネズミが、明るいところで堂々と技を演じて楽しませることは画期的なことではないか」
老いらくさんがそう言った。それを聞いて、ぼくは
「技を演じるのは、ぼくの子どもたちであって、老いらくさんではありません」
と言った。すると老いらくさんが、不機嫌そうな声で
「わしが身を粉にして協力するから、おまえの子どもたちは、うまく演じることができるのだろうが」
と言って、言葉を返していた。
「確かに、そうですね。ボールがなかったら、うちの子どもたちは玉乗りもヘディングパスもできませんからね」
ぼくはそう言って、失言を取り消さざるを得なかった。ぼくはそれからまもなく、老いらくさんと別れて、うちへ帰っていった。
うちへ着くと、妻猫が子どもたちから訓練の成果が上がっていることを聞いて、晴れやかな顔をしていた。
「子どもたちは、みんな頑張っていますね」
妻猫がそう言った。
「そうだね。最初はみんな、うまくいかなくて失敗ばかりしていたが、あきらめないで、何度も何度も練習を繰り返しているうちに上達していった」
ぼくは妻猫にそう言った。すると妻猫が
「子どもたちが頑張っている姿を聞いて、わたしは若いころをふっと思い出したわ」
妻猫がそう言った。
「白玉塔のてっぺんに登ったことだろう?」
ぼくはそう聞いた。すると妻猫がうなずいた。
「白玉塔は、この翠湖公園のシンボルタワーだから、てっぺんに登りたいと思っている猫が、たくさんいた。でも、わたし以外は、怖くて誰もてっぺんまで登ることができなかった。わたしも途中で何度も落下して、あきらめかけたことが、たびたびあった。それでもあきらめないで、練習を繰り返して、とうとう目的を達成することができた」
妻猫がそう言った。ぼくはそれを聞いて
「高い所に登っていけるお母さんの才能を一番受け継いでいるのはアーヤーだから、アーヤーは、今、高い木に登って、そこから空中を飛んで別の木に渡る訓練をしています」
と言った。すると妻猫が
「空を飛ぶのは爽快だけど、とても危険を伴うことだから、アーヤーのために少しでも何か役に立つことはないかと思って、私は今、アーヤーに飛ぶ前の心の持ち方について話しているところです」
と言った。
「そうですか。空中飛行を成功させるためにはテクニックだけでなくて、心の持ちようも大事だからな」
ぼくは妻猫にそう言った。すると妻猫が
「空中飛行だけでなくて、すべてのことに言えると思います。玉乗りにしても、ヘディングパスにしても、テクニックだけでなくて、心の持ちようによって、うまくいったり、いかなかったりするものだと、わたしは思っています。失敗してもくじけずに、チャレンジし続けること。そして自分に自信をもって臨むこと。そうすることで、たとえどんなに困難に思えることでも大抵の場合は克服できると思っています」
と答えていた。ぼくはそれを聞いて、うなずいていた。
ぼくはそのあと妻猫に、フェイナとシャオパイがダンスの練習をしていることを話した。すると妻猫は目を輝かせながら聞いていた。妻猫は、音感に富んだ猫だから、ワルツの美しさや魅力について知っていた。
「ワルツを踊ることで、フェイナとシャオパイのコミュニケーションのスキルも自然と高まっていって、お互いの信頼と理解度がこれからますます深まっていくと思うわ。ワルツを踊ることは、健康にもよい影響を与えるので、フェイナとシャオパイの心も体も豊かにすることができると思います」
妻猫がそう言っていた。それを聞いて、ぼくは妻猫に
「そんなにいいことが多いワルツなら、ぼくもいつか機会があったら、お母さんといっしょにワルツを踊ってみたいなあ」
と言った。すると妻猫が
「わたしもいつかお父さんといっしょにワルツを踊ってみたいわ」
と言って、まるで楽しい夢を見ているかのように、心を浮き浮きと弾ませていた。
「フェイナやシャオパイから、いつか習おう」
ぼくは妻猫にそう答えた。すると妻猫が、にっこりとうなずいた。
妻猫はとても優雅な猫だからワルツを踊るのは似合うと思うけど、ぼくはどうだろうか。リード役として、妻猫をうまく導きながら、上手に踊ることができるだろうか。リードとフォローのバランスが取れたときに、ワルツはよりいっそう美しくなるし、音楽に乗ってリズミカルに踊ることが一番の鍵だから、ぼくにはあまり自信がなかったが、それでも妻猫と楽しく踊っている姿を想像すると、心のなかが、ほんわかとしてきた。
ぼくは毎日、子どもたちを連れて楠林に行って、子どもたちの訓練の様子を見ていた。老いらくさんも、老体にむちうって、子どもたちの訓練に毎日つきあってくれた。今週の土曜日に再び、楠林の近くで楽しい興行が開かれるので、スイカ―は準備に向けて余念がなかった。ぼくの子どもたちは今回初めて、技を披露することになるので、見にくる子どもたちを楽しませようと思って張り切っていた。サンパオはボールの上に乗れるようになっていた。ボールの上でジャンプして、空中で一回転してから、ボールの上に着地することができるようになっていた。今は二回転ジャンプに取り組んでいた。パントーとアーヤーが取り組んでいたジャンプしながら頭でボールをパスをする練習も五往復までできるようになっていた。十往復まで伸ばすことを目標に頑張っていた。アーヤーが単独で取り組んでいたムササビ飛びも上達して、今は高さ七メートルぐらいの木の枝から八メートルぐらい飛んで、別の木に飛び移ることができるようになっていた。
子どもたちの訓練は午前中で終わり、午後はフェイナとシャオパイがやってきて、ダンスのレッスンを受けていた。夕方から夜にかけては、スイカ―はオウムにCDを聞かせながらワルツの旋律やリズムを教えていた。スイカ―はオウムに『子犬のワルツ』という曲を、繰り返し教えていた。ショパンという人が作った曲で、軽快で愛らしい旋律が特徴的な音楽で、よく知られている有名な曲だ。音が細かくて、スピード感にあふれていて、タイトル通り、子犬がうれしそうに走り回っているように聞こえる曲だから、フェイナとシャオパイという犬のペアが踊るには、うってつけの曲だった。
そのほか、スイカ―はウィンナー・ワルツの真骨頂である『美しき青きドナウ』や、チャイコフスキーという人が作った『花のワルツ』という曲の旋律やリズムも教えていた。スイカ―の音楽に対する造詣の深さもさることながら、懸命に覚え込んで自分のものにしようとしているオウムの音感の高さにも感心させられた。老いらくさんも、ぼくといっしょに、うっとりしたような顔をしながらオウムの音真似を聞いていた。すべての訓練が終わったあと、スイカ―は木の根元の近くにあるうろのなかに入っていった。オウムはそれよりも少し高いところにあるうろのなかに入っていった。スイカ―もオウムも、うろのなかで寝るのだろうと、ぼくは思った。
ぼくと老いらくさんは、そのあと楠林を出て、それぞれのうちへ帰り始めた。途中で老いらくさんが、感慨深そうな声で
「こんな日がこようとは、わしは夢にも思っていなかった」
と言った。ぼくには意味がよく分からなかったので
「どんな日ですか」
と、老いらくさんに聞き返した。
「嫌われ者のネズミが、みんなの前で跳んだりはねたりして楽しませる日だよ」
老いらくさんがそう言った。それを聞いて、ぼくは
「老いらくさんがネズミだと思って見る子どもは一人もいないはずです。ボールのなかに入っていて姿が見えないからです」
と言った。すると老いらくさんが
「そんなことはどうでもいいよ。これまでずっと人目を避けるように生きてきたネズミが、明るいところで堂々と技を演じて楽しませることは画期的なことではないか」
老いらくさんがそう言った。それを聞いて、ぼくは
「技を演じるのは、ぼくの子どもたちであって、老いらくさんではありません」
と言った。すると老いらくさんが、不機嫌そうな声で
「わしが身を粉にして協力するから、おまえの子どもたちは、うまく演じることができるのだろうが」
と言って、言葉を返していた。
「確かに、そうですね。ボールがなかったら、うちの子どもたちは玉乗りもヘディングパスもできませんからね」
ぼくはそう言って、失言を取り消さざるを得なかった。ぼくはそれからまもなく、老いらくさんと別れて、うちへ帰っていった。
うちへ着くと、妻猫が子どもたちから訓練の成果が上がっていることを聞いて、晴れやかな顔をしていた。
「子どもたちは、みんな頑張っていますね」
妻猫がそう言った。
「そうだね。最初はみんな、うまくいかなくて失敗ばかりしていたが、あきらめないで、何度も何度も練習を繰り返しているうちに上達していった」
ぼくは妻猫にそう言った。すると妻猫が
「子どもたちが頑張っている姿を聞いて、わたしは若いころをふっと思い出したわ」
妻猫がそう言った。
「白玉塔のてっぺんに登ったことだろう?」
ぼくはそう聞いた。すると妻猫がうなずいた。
「白玉塔は、この翠湖公園のシンボルタワーだから、てっぺんに登りたいと思っている猫が、たくさんいた。でも、わたし以外は、怖くて誰もてっぺんまで登ることができなかった。わたしも途中で何度も落下して、あきらめかけたことが、たびたびあった。それでもあきらめないで、練習を繰り返して、とうとう目的を達成することができた」
妻猫がそう言った。ぼくはそれを聞いて
「高い所に登っていけるお母さんの才能を一番受け継いでいるのはアーヤーだから、アーヤーは、今、高い木に登って、そこから空中を飛んで別の木に渡る訓練をしています」
と言った。すると妻猫が
「空を飛ぶのは爽快だけど、とても危険を伴うことだから、アーヤーのために少しでも何か役に立つことはないかと思って、私は今、アーヤーに飛ぶ前の心の持ち方について話しているところです」
と言った。
「そうですか。空中飛行を成功させるためにはテクニックだけでなくて、心の持ちようも大事だからな」
ぼくは妻猫にそう言った。すると妻猫が
「空中飛行だけでなくて、すべてのことに言えると思います。玉乗りにしても、ヘディングパスにしても、テクニックだけでなくて、心の持ちようによって、うまくいったり、いかなかったりするものだと、わたしは思っています。失敗してもくじけずに、チャレンジし続けること。そして自分に自信をもって臨むこと。そうすることで、たとえどんなに困難に思えることでも大抵の場合は克服できると思っています」
と答えていた。ぼくはそれを聞いて、うなずいていた。
ぼくはそのあと妻猫に、フェイナとシャオパイがダンスの練習をしていることを話した。すると妻猫は目を輝かせながら聞いていた。妻猫は、音感に富んだ猫だから、ワルツの美しさや魅力について知っていた。
「ワルツを踊ることで、フェイナとシャオパイのコミュニケーションのスキルも自然と高まっていって、お互いの信頼と理解度がこれからますます深まっていくと思うわ。ワルツを踊ることは、健康にもよい影響を与えるので、フェイナとシャオパイの心も体も豊かにすることができると思います」
妻猫がそう言っていた。それを聞いて、ぼくは妻猫に
「そんなにいいことが多いワルツなら、ぼくもいつか機会があったら、お母さんといっしょにワルツを踊ってみたいなあ」
と言った。すると妻猫が
「わたしもいつかお父さんといっしょにワルツを踊ってみたいわ」
と言って、まるで楽しい夢を見ているかのように、心を浮き浮きと弾ませていた。
「フェイナやシャオパイから、いつか習おう」
ぼくは妻猫にそう答えた。すると妻猫が、にっこりとうなずいた。
妻猫はとても優雅な猫だからワルツを踊るのは似合うと思うけど、ぼくはどうだろうか。リード役として、妻猫をうまく導きながら、上手に踊ることができるだろうか。リードとフォローのバランスが取れたときに、ワルツはよりいっそう美しくなるし、音楽に乗ってリズミカルに踊ることが一番の鍵だから、ぼくにはあまり自信がなかったが、それでも妻猫と楽しく踊っている姿を想像すると、心のなかが、ほんわかとしてきた。

