天気……今日は暖かい一日だった。柔らかな日差しを体いっぱいに浴びながら、青々と成長し始めた草の上に寝転がっていると、とても気持ちがよくて、思わず、うとうとして居眠りしたくなるほどだった。
けさ、老いらくさんがボールのなかに入って、ころころと転がりながら、うちの前にやってきた。昨日、スイカ―が、ぼくの子どもたちやフェイナに、これから毎日芸を教えると言ってくれたから、老いらくさんは子どもたちを誘いに来たのだった。ぼくはフェイナが来るまで待つことにして、老いらくさんと子どもたちを一足先に楠林に向かわせた。
お昼過ぎに、フェイナがやってきた。シャオパイもいた。
「やあ、シャオパイ、久しぶりだなあ。元気だったか?」
ぼくはシャオパイに聞いた。
「うん、元気だよ」
シャオパイがそう答えた。
「そうか、それはよかった」
ぼくはそう答えた。
「笑い猫のお兄さんも元気だった?」
「うん、元気だよ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「よかった」
シャオパイがうれしそうな顔をしながら、そう答えた。
シャオパイとは、一か月以上会っていなかったが、以前のシャオパイとは雰囲気が、少し違っているように見えた。もともと、おっとりしている犬だったが、以前よりもさらにおっとりしていて、まるで大きなお城に住んでいるハンサムな王子様のように輝いているように見えた。飼い主さんに感化されて自然とそうなったのかもしれないと、ぼくは思った。シャオパイの飼い主さんを、ぼくは知っているが、不思議な雰囲気に包まれた優美な女性だからだ。シャオパイは以前、翠湖公園の梅園のなかで、この女性と運命的な出会いをして、それ以来、郊外にある立派な別荘のなかで、この女性の手となり足となってサポートしながら暮らしている。この女性は奇病を患っていて、時々、急に意識を失って倒れることがあるが、シャオパイが気がついて助けてあげたことが、これまでに何度もあった。ぼくはシャオパイの飼い主さんのことも気がかりだったので、シャオパイに
「飼い主さんは、その後、元気にしておられますか」
と聞いた。するとシャオパイが
「飼い主さんは春節が終わったあと、どこかへ旅行に出かけました」
と答えた。
「そうか。それで、おまえは出てくることができたのだな」
と、ぼくは聞いた。
「そうです」
シャオパイがそう答えた。
ぼくはそれからまもなく、フェイナやシャオパイといっしょに楠林に向かった。楠林を通り抜けて、その先にある広場まで来ると、ぼくの子どもたちが、スイカ―の指導を受けながら技の習得に励んでいる姿が目に入った。老いらくさんも、元気よく、ぴょんぴょんとボールのなかで飛び跳ねて、子どもたちの技の習得に力を貸していた。子どもたちの動きを見ていると、昨日よりも上達していることが分かったので、ぼくはうれしくなった。
スイカ―は、ぼくたちの姿に気がつくと、子どもたちの練習をやめて、ぼくたちのほうに近づいてきた。
「おまえもダンスの練習にやってきたのか」
スイカ―がフェイナに話しかけていた。フェイナのすぐ横にシャオパイがいるのを見て
「今日はパートナーを連れてきたのか。どちらもきれいなプードル犬だから、美しさと優雅さにあふれたワルツを習得したら、見る人に深い感動を与えるだろう」
とスイカ―が言っていた。スイカ―が言ったことを、ぼくはフェイナとシャオパイに伝えた。するとフェイナとシャオパイが顔を見合わせながら、にっこりと、うなずいていた。
スイカ―は、そのあと早速、フェイナとシャオパイにダンスの指導を始めた。シャオパイはオス犬で、フェイナはメス犬だから、シャオパイがリード(導くほう)、フェイナがフォロー(導かれるほう)に役割を決めて、それぞれの役割に応じて、手取り足取りしながら懇切丁寧に指導をおこなっていた。一番初めは、リードにもフォローにも共通する基本的な姿勢の取り方から教えていた。足を軽く開いて立って、そのあと背筋を伸ばして頭をまっすぐ保つことが大切であることを自分で実際におこないながら感覚的に教えていた。そのあとスイカ―はワルツのステップの踏み方について教えていた。ワルツのステップには「前進ステップ」と、「後進ステップ」があって、リードとフォローではステップの踏み方が違うので、それぞれのステップの踏み方を実践を通して教えていた。「前進ステップ」ではリードは左足から踏み出し、フォローは右足から踏み出して、そのあと次の足を横に出して、最後に足をそろえることを、繰り返し練習させていた。「後進ステップ」では、リードは右足から下がり、フォローは左足から下がることや、下がったあと次の足を横に出して、最後に足をそろえることを分かりやすく教えていた。木の上ではオウムがワルツの曲を歌いながら、翼を横に広げて、ワルツ特有の「ズン、チャッ、チャッ、ズン、チャッ、チャッ」という三拍子のリズムを刻んでいて、フェイナとシャオパイに体得させようとしていた。フェイナもシャオパイも音感に優れた犬だし、教わったことを習得する能力が高い犬だから、練習をすればするほど、息がぴったり合ったダンスは本物のワルツらしくなってきた。フェイナとシャオパイが優雅に踊っている姿を見ながら、スイカ―が
「いいよ、いいよ。その調子で頑張れ」
と言って、にこにこしながら声をかけていた。ぼくも
「人間顔負けの演技だよ」
と言って、ほめてあげた。優雅さにあふれていて、しかも流れるような動きでワルツを踊っている姿を見ていると、ぼくの心はとても和んだ。ぼくの子どもたちや、老いらくさんも、美しさに魅了されていて、ぼうっとしたような顔をしていた。まるで時間がゆっくりと流れているかのように思えた。
フェイナとシャオパイは、照れくさそうな顔をしながら、あうんの呼吸で踊り続けていた。しばらくしてからフェイナとシャオパイは、ダンスをやめて、ぼくの近くへやってきた。
「楽しかったわ」
フェイナがそう言った。
「ぼくも楽しかった」
シャオパイがそう答えていた。
「ワルツを踊ることで、わたしは自分自身と向き合う時間を持つことができたわ」
フェイナがそう言った。
「ぼくは体を動かすことの楽しさや、リズムに合わせて動くことの喜びを感じることができた」
シャオパイはそう答えていた。
フェイナとシャオパイの会話を聞いて、ぼくはとてもうらやましく思った。ぼくもいつか機会があったら、妻猫といっしょにワルツを踊ってみたいと思ったりもしていた。
フェイナとシャオパイの素晴らしいダンスを見て、ぼくの子どもたちは、ぼく以上に気持ちが高揚していた。アーヤーがそのなかでも特に感極まっていて
「自分たちの才能をいかんなく発揮して、すごいわ」
と言っていた。ぼくはそれを聞いて、アーヤーに
「おまえにも、おまえにしかない才能があると思うから、その才能をいかんなく発揮してみないか」
と誘い水をかけた。するとアーヤーが
「わたしには、どんな才能があるのかしら」
と答えていた。
「そうだね……、おまえは、きょうだいのなかでも、お母さんの才能を一番多く受け継いでいるから、高い所に登っても怖がらないところがある。その才能を生かして、高い木の上に登ってから、ムササビのように、ほかの木に飛び移ることをやってみないか。初めは少し怖く感じるかもしれないが、慣れたら飛ぶことが楽しく感じられるようになるかもしれない」
ぼくはアーヤーにそう言った。それを聞いてアーヤーは興味深そうな顔をしていた。
「面白そうね。それをやってみようかしら。鳥でなくてもムササビのように飛べる動物もいるのだから、もしかしたら、わたしも飛べるようになるかもしれない」
アーヤーが目を輝かせながら、そう答えていた。
アーヤーはそれからまもなく、さっそく試してみることにして、楠林のなかにある楠の木に登っていって、高さ五メートルぐらいのところから、隣りの楠の木に、手足を広げて、ひらりと滑空して飛び移ることに見事に成功した。ぼくはそれを見て、アーヤーに拍手を送った。アーヤーが飛んでいるときは、まるでムササビが飛んでいるように見えた。スイカ―の目にもアーヤーの姿が目に入って、目を丸くしながら
「空飛ぶ猫を初めて見た」
と言っていた。ぼくはそれを聞いて、空飛ぶ猫とは、ずいぶん大げさな言い方だなあと思った。でも、ぼくはスイカ―が言ったことを、そのままアーヤーに伝えた。するとアーヤーがまんざらでもなさそうな顔をしていた。それを見て、ぼくはアーヤーに
「調子に乗るのはまだ早いよ。本物の空飛ぶ猫になるためには、もっと高い木の上から、最低でも十メートルぐらいは飛ばなければならない。おまえはまだ五メートルぐらいしか飛んでいない」
と言った。それを聞いてアーヤーが
「分かりました。慢心することなく、これからも頑張ります」
と,殊勝に答えていた。
ぼくたちはそれからまもなく、スイカ―やオウムと別れて、うちへ帰っていった。
けさ、老いらくさんがボールのなかに入って、ころころと転がりながら、うちの前にやってきた。昨日、スイカ―が、ぼくの子どもたちやフェイナに、これから毎日芸を教えると言ってくれたから、老いらくさんは子どもたちを誘いに来たのだった。ぼくはフェイナが来るまで待つことにして、老いらくさんと子どもたちを一足先に楠林に向かわせた。
お昼過ぎに、フェイナがやってきた。シャオパイもいた。
「やあ、シャオパイ、久しぶりだなあ。元気だったか?」
ぼくはシャオパイに聞いた。
「うん、元気だよ」
シャオパイがそう答えた。
「そうか、それはよかった」
ぼくはそう答えた。
「笑い猫のお兄さんも元気だった?」
「うん、元気だよ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「よかった」
シャオパイがうれしそうな顔をしながら、そう答えた。
シャオパイとは、一か月以上会っていなかったが、以前のシャオパイとは雰囲気が、少し違っているように見えた。もともと、おっとりしている犬だったが、以前よりもさらにおっとりしていて、まるで大きなお城に住んでいるハンサムな王子様のように輝いているように見えた。飼い主さんに感化されて自然とそうなったのかもしれないと、ぼくは思った。シャオパイの飼い主さんを、ぼくは知っているが、不思議な雰囲気に包まれた優美な女性だからだ。シャオパイは以前、翠湖公園の梅園のなかで、この女性と運命的な出会いをして、それ以来、郊外にある立派な別荘のなかで、この女性の手となり足となってサポートしながら暮らしている。この女性は奇病を患っていて、時々、急に意識を失って倒れることがあるが、シャオパイが気がついて助けてあげたことが、これまでに何度もあった。ぼくはシャオパイの飼い主さんのことも気がかりだったので、シャオパイに
「飼い主さんは、その後、元気にしておられますか」
と聞いた。するとシャオパイが
「飼い主さんは春節が終わったあと、どこかへ旅行に出かけました」
と答えた。
「そうか。それで、おまえは出てくることができたのだな」
と、ぼくは聞いた。
「そうです」
シャオパイがそう答えた。
ぼくはそれからまもなく、フェイナやシャオパイといっしょに楠林に向かった。楠林を通り抜けて、その先にある広場まで来ると、ぼくの子どもたちが、スイカ―の指導を受けながら技の習得に励んでいる姿が目に入った。老いらくさんも、元気よく、ぴょんぴょんとボールのなかで飛び跳ねて、子どもたちの技の習得に力を貸していた。子どもたちの動きを見ていると、昨日よりも上達していることが分かったので、ぼくはうれしくなった。
スイカ―は、ぼくたちの姿に気がつくと、子どもたちの練習をやめて、ぼくたちのほうに近づいてきた。
「おまえもダンスの練習にやってきたのか」
スイカ―がフェイナに話しかけていた。フェイナのすぐ横にシャオパイがいるのを見て
「今日はパートナーを連れてきたのか。どちらもきれいなプードル犬だから、美しさと優雅さにあふれたワルツを習得したら、見る人に深い感動を与えるだろう」
とスイカ―が言っていた。スイカ―が言ったことを、ぼくはフェイナとシャオパイに伝えた。するとフェイナとシャオパイが顔を見合わせながら、にっこりと、うなずいていた。
スイカ―は、そのあと早速、フェイナとシャオパイにダンスの指導を始めた。シャオパイはオス犬で、フェイナはメス犬だから、シャオパイがリード(導くほう)、フェイナがフォロー(導かれるほう)に役割を決めて、それぞれの役割に応じて、手取り足取りしながら懇切丁寧に指導をおこなっていた。一番初めは、リードにもフォローにも共通する基本的な姿勢の取り方から教えていた。足を軽く開いて立って、そのあと背筋を伸ばして頭をまっすぐ保つことが大切であることを自分で実際におこないながら感覚的に教えていた。そのあとスイカ―はワルツのステップの踏み方について教えていた。ワルツのステップには「前進ステップ」と、「後進ステップ」があって、リードとフォローではステップの踏み方が違うので、それぞれのステップの踏み方を実践を通して教えていた。「前進ステップ」ではリードは左足から踏み出し、フォローは右足から踏み出して、そのあと次の足を横に出して、最後に足をそろえることを、繰り返し練習させていた。「後進ステップ」では、リードは右足から下がり、フォローは左足から下がることや、下がったあと次の足を横に出して、最後に足をそろえることを分かりやすく教えていた。木の上ではオウムがワルツの曲を歌いながら、翼を横に広げて、ワルツ特有の「ズン、チャッ、チャッ、ズン、チャッ、チャッ」という三拍子のリズムを刻んでいて、フェイナとシャオパイに体得させようとしていた。フェイナもシャオパイも音感に優れた犬だし、教わったことを習得する能力が高い犬だから、練習をすればするほど、息がぴったり合ったダンスは本物のワルツらしくなってきた。フェイナとシャオパイが優雅に踊っている姿を見ながら、スイカ―が
「いいよ、いいよ。その調子で頑張れ」
と言って、にこにこしながら声をかけていた。ぼくも
「人間顔負けの演技だよ」
と言って、ほめてあげた。優雅さにあふれていて、しかも流れるような動きでワルツを踊っている姿を見ていると、ぼくの心はとても和んだ。ぼくの子どもたちや、老いらくさんも、美しさに魅了されていて、ぼうっとしたような顔をしていた。まるで時間がゆっくりと流れているかのように思えた。
フェイナとシャオパイは、照れくさそうな顔をしながら、あうんの呼吸で踊り続けていた。しばらくしてからフェイナとシャオパイは、ダンスをやめて、ぼくの近くへやってきた。
「楽しかったわ」
フェイナがそう言った。
「ぼくも楽しかった」
シャオパイがそう答えていた。
「ワルツを踊ることで、わたしは自分自身と向き合う時間を持つことができたわ」
フェイナがそう言った。
「ぼくは体を動かすことの楽しさや、リズムに合わせて動くことの喜びを感じることができた」
シャオパイはそう答えていた。
フェイナとシャオパイの会話を聞いて、ぼくはとてもうらやましく思った。ぼくもいつか機会があったら、妻猫といっしょにワルツを踊ってみたいと思ったりもしていた。
フェイナとシャオパイの素晴らしいダンスを見て、ぼくの子どもたちは、ぼく以上に気持ちが高揚していた。アーヤーがそのなかでも特に感極まっていて
「自分たちの才能をいかんなく発揮して、すごいわ」
と言っていた。ぼくはそれを聞いて、アーヤーに
「おまえにも、おまえにしかない才能があると思うから、その才能をいかんなく発揮してみないか」
と誘い水をかけた。するとアーヤーが
「わたしには、どんな才能があるのかしら」
と答えていた。
「そうだね……、おまえは、きょうだいのなかでも、お母さんの才能を一番多く受け継いでいるから、高い所に登っても怖がらないところがある。その才能を生かして、高い木の上に登ってから、ムササビのように、ほかの木に飛び移ることをやってみないか。初めは少し怖く感じるかもしれないが、慣れたら飛ぶことが楽しく感じられるようになるかもしれない」
ぼくはアーヤーにそう言った。それを聞いてアーヤーは興味深そうな顔をしていた。
「面白そうね。それをやってみようかしら。鳥でなくてもムササビのように飛べる動物もいるのだから、もしかしたら、わたしも飛べるようになるかもしれない」
アーヤーが目を輝かせながら、そう答えていた。
アーヤーはそれからまもなく、さっそく試してみることにして、楠林のなかにある楠の木に登っていって、高さ五メートルぐらいのところから、隣りの楠の木に、手足を広げて、ひらりと滑空して飛び移ることに見事に成功した。ぼくはそれを見て、アーヤーに拍手を送った。アーヤーが飛んでいるときは、まるでムササビが飛んでいるように見えた。スイカ―の目にもアーヤーの姿が目に入って、目を丸くしながら
「空飛ぶ猫を初めて見た」
と言っていた。ぼくはそれを聞いて、空飛ぶ猫とは、ずいぶん大げさな言い方だなあと思った。でも、ぼくはスイカ―が言ったことを、そのままアーヤーに伝えた。するとアーヤーがまんざらでもなさそうな顔をしていた。それを見て、ぼくはアーヤーに
「調子に乗るのはまだ早いよ。本物の空飛ぶ猫になるためには、もっと高い木の上から、最低でも十メートルぐらいは飛ばなければならない。おまえはまだ五メートルぐらいしか飛んでいない」
と言った。それを聞いてアーヤーが
「分かりました。慢心することなく、これからも頑張ります」
と,殊勝に答えていた。
ぼくたちはそれからまもなく、スイカ―やオウムと別れて、うちへ帰っていった。

