野いちご源氏物語 五三 手習(てならい)

(おお)尼君(あまぎみ)のご体調はずいぶんよくなった。
方角(ほうがく)(うらな)いも問題なくなったので、(うす)気味(きみ)悪いところにこれ以上長居(ながい)したくない。
宇治(うじ)(いん)を出て小野(おの)の家へ向かうことにするけれど、
「この人はまだ回復していらっしゃいませんよ。一緒にお連れしても道中(どうちゅう)どうなることか。おかわいそうに」
と、女房(にょうぼう)たちは女を心配している。

乗り物はふたつあって、片方に大尼君と、お仕えする(あま)姿(すがた)女房(にょうぼう)ふたりが乗る。
もうひとつに女と尼君(あまぎみ)がお乗りになった。
尼君は乗り物をときどき止め、女に薬湯(やくとう)などを飲ませなさる。
比叡(ひえい)(ざん)(ふもと)小野(おの)まで、まだ道のりは長い。
「途中どこかで一泊した方がよかったかもしれない」
と後悔しながら、一行(いっこう)は夜遅くに家に着いた。

僧都(そうづ)は大尼君を、尼君は女を世話して乗り物から降ろしなさった。
お年寄りは常にどこかしら体調が悪いものだし、長旅の(つか)れもあって、大尼君はしばらく寝込んでしまわれる。
少しずつ回復なさったところで、僧都は修行(しゅぎょう)中だった山へ戻っていかれた。