大尼君には紀伊の守という役職の孫がいる。
ちょうど任期が終わり、紀伊の国から都に戻ったので、祖母君に挨拶にやって来た。
下級貴族だけれど人生を楽しんでいそうな雰囲気の人よ。
「私が紀伊の国におりました間、いかがお過ごしでしたか」
と大尼君にお尋ねする。
でも話が通じないから、伯母にあたる尼君の部屋に来て言った。
「祖母君はすっかり呆けてしまわれましたね。お気の毒に。もう少し早く、まだ私が誰かお分かりになるうちに孝行したかったのですが。遠い紀伊の国にいたことが悔やまれます。私も妹も、両親を亡くしてからは、あの祖母君を親代わりと思っておりました。妹はときどきお手紙を寄越していますか」
「もうずいぶんなお年ですからね。長生きなさるとお気の毒なことも増えるものです。あなたの妹君は常陸の守の奥様でしたか。ここしばらくお手紙はありません。常陸の守の任期が終わって都に戻ったころには、きっと大尼君はお亡くなりになっているでしょうね」
浮舟の君は「常陸の守」という言葉にはっとした。
継父の次に常陸の守になった人のことだと分かっていても、どうしても反応してしまう。
ちょうど任期が終わり、紀伊の国から都に戻ったので、祖母君に挨拶にやって来た。
下級貴族だけれど人生を楽しんでいそうな雰囲気の人よ。
「私が紀伊の国におりました間、いかがお過ごしでしたか」
と大尼君にお尋ねする。
でも話が通じないから、伯母にあたる尼君の部屋に来て言った。
「祖母君はすっかり呆けてしまわれましたね。お気の毒に。もう少し早く、まだ私が誰かお分かりになるうちに孝行したかったのですが。遠い紀伊の国にいたことが悔やまれます。私も妹も、両親を亡くしてからは、あの祖母君を親代わりと思っておりました。妹はときどきお手紙を寄越していますか」
「もうずいぶんなお年ですからね。長生きなさるとお気の毒なことも増えるものです。あなたの妹君は常陸の守の奥様でしたか。ここしばらくお手紙はありません。常陸の守の任期が終わって都に戻ったころには、きっと大尼君はお亡くなりになっているでしょうね」
浮舟の君は「常陸の守」という言葉にはっとした。
継父の次に常陸の守になった人のことだと分かっていても、どうしても反応してしまう。



