野いちご源氏物語 五三 手習(てならい)

似たようなことをひたすら書きつらねていると、中将(ちゅうじょう)様からお手紙が届いた。
女房(にょうぼう)たちはまだ動揺(どうよう)しているから、
姫君(ひめぎみ)出家(しゅっけ)してしまわれました」
とだけ伝えて使者(ししゃ)を帰した。

<なんということだ。出家を決意していた人だったから、私を近づけなかったのか。それにしても情けないことをなさる。女房たちは私との結婚を期待しているように見えたが>
中将様は(くや)しくて、すぐにまたお手紙をお書きになった。
「ご出家なさったそうですね。今さら(うら)(ごと)を申し上げても仕方ありません。私もあなたの後を追って、早く出家してしまいたい」
もう(あま)になったから、浮舟(うきふね)(きみ)は安心してお手紙を読む。

どう思ったのか、お返事らしきものをちょっとした紙に書いた。
「心は(ぞく)世間(せけん)から離れたつもりだけれど、体はどうなっていくのだろう」
女房がこの紙を中将様に差し上げようとする。
「そなたが清書してからにしてちょうだい」
浮舟の君は止めたけれど、
「それでは姫君のお気持ちが伝わりませんでしょう」
と女房は送ってしまった。
初めて浮舟の君の筆跡(ひっせき)を見た中将様は、どうしようもなく悲しくお思いになる。