野いちご源氏物語 五三 手習(てならい)

朝になった。
あれほど反対していた女房(にょうぼう)たちに姿を見せると思うと、さすがに浮舟(うきふね)(きみ)も気まずい。
短くなった(かみ)の毛先が(こし)のあたりで()れるのも落ち着かない。
()(ぞろ)いな切り方を見ては、
<面倒なことを言わずに整えてくれる人がいたらよいのだけれど>
と、部屋を暗くして引きこもっている。

もともと自分の気持ちを言葉にするのが苦手な性格で、しかも今は気を許せる話し相手もいない。
ただ(すずり)に向かって、思うことを紙に書いていく。
「自殺しようとしたときに自分の体も世間も捨てたつもりだけれど、出家(しゅっけ)してもう一度すべてを捨てたのだ。これで本当に(ぞく)世間(せけん)とは無縁(むえん)だ」
「自殺と出家で私は二度も世間を捨てたのだ」