野いちご源氏物語 五三 手習(てならい)

僧都(そうづ)一行(いっこう)は都へ出発なさった。
ひっそりとした家に夜の風の音が(ひび)く。
「私どもはあなた様のご将来に期待していたのですよ。こんなところでお暮らしになる姫君(ひめぎみ)ではない、きっと今に中将(ちゅうじょう)様の奥様として都にお戻りになるのだ、と。それなのに(あま)になどなってしまわれて、これからの長い人生をどうなさるおつもりですか。(とし)()いた私どもにだって、世間と(えん)を切った出家(しゅっけ)生活は悲しいものですのに」

女房(にょうぼう)は責めたてるけれど、浮舟(うきふね)(きみ)はただほっとしている。
<これで恋愛や結婚とは無関係になった。あぁ、うれしい>
これまでの苦しみがさわやかに消えたような気がする。