はさみと切った髪を入れる箱を浮舟の君は差し出した。
僧都は弟子を呼んで、
「お髪を切ってさしあげよ」
とお命じになる。
宇治の院にもお供をしていた弟子たちだから、
<あのときの妖怪の憑りつき方はたしかにひどかった。一度あんな目に遭えば、出家したくなるのも当然かもしれない>
と納得する。
とはいえついたての向こうから髪を出すと、もったいないほどの美しさなので、しばらく切るのをためらってしまう。
こんなことになっているのに女房たちは気づかない。
それぞれ僧都のお供に知り合いがいて、その接待をしている。
女童ひとりだけが気づいて女房たちに知らせた。
あわててやって来ると、もう浮舟の君は尼姿になっている。
僧都はとりあえずご自分のお着物を浮舟の君に着せなさった。
儀式は厳かに進んでいき、
「ご両親がいらっしゃる方角に向かって手を合わせなさい」
と僧都がおっしゃる。
<母君は今どこにいらっしゃるのだろう>
どの方角を向けばよいか分からず、我慢できなくて泣いてしまう。
女房はうろたえる。
「あぁ、とんでもないことを。どうしてこんな軽はずみなことをなさったのですか。尼君がお帰りになったらなんとおっしゃるか」
うるさく騒ぐのを僧都がお叱りになったので、女房はただ茫然としているしかない。
浮舟の君は、出家するときの決まり文句を僧都に教えられながら唱えていく。
「この世での愛情を捨てることが、残された人のためでもあるのだ」という出家者を励ます言葉に、
<私はもう誰かへの愛情など捨てきっているけれど>
と浮舟の君は悲しくなる。
弟子はせっかくの美しい髪を完全には切れなくて、
「あとで尼君たちが整えてさしあげてください」
と言う。
前髪は僧都がお切りになった。
「尼姿になったことを後悔なさいませんように」
などと出家生活の心構えをお話しになる。
<この家でお世話になっているかぎり、出家などとても許してもらえそうにないと思っていたけれど、なんという幸いだろう。ついに尼になることができた。生きていた甲斐があった>
と浮舟の君はよろこぶ。
僧都は弟子を呼んで、
「お髪を切ってさしあげよ」
とお命じになる。
宇治の院にもお供をしていた弟子たちだから、
<あのときの妖怪の憑りつき方はたしかにひどかった。一度あんな目に遭えば、出家したくなるのも当然かもしれない>
と納得する。
とはいえついたての向こうから髪を出すと、もったいないほどの美しさなので、しばらく切るのをためらってしまう。
こんなことになっているのに女房たちは気づかない。
それぞれ僧都のお供に知り合いがいて、その接待をしている。
女童ひとりだけが気づいて女房たちに知らせた。
あわててやって来ると、もう浮舟の君は尼姿になっている。
僧都はとりあえずご自分のお着物を浮舟の君に着せなさった。
儀式は厳かに進んでいき、
「ご両親がいらっしゃる方角に向かって手を合わせなさい」
と僧都がおっしゃる。
<母君は今どこにいらっしゃるのだろう>
どの方角を向けばよいか分からず、我慢できなくて泣いてしまう。
女房はうろたえる。
「あぁ、とんでもないことを。どうしてこんな軽はずみなことをなさったのですか。尼君がお帰りになったらなんとおっしゃるか」
うるさく騒ぐのを僧都がお叱りになったので、女房はただ茫然としているしかない。
浮舟の君は、出家するときの決まり文句を僧都に教えられながら唱えていく。
「この世での愛情を捨てることが、残された人のためでもあるのだ」という出家者を励ます言葉に、
<私はもう誰かへの愛情など捨てきっているけれど>
と浮舟の君は悲しくなる。
弟子はせっかくの美しい髪を完全には切れなくて、
「あとで尼君たちが整えてさしあげてください」
と言う。
前髪は僧都がお切りになった。
「尼姿になったことを後悔なさいませんように」
などと出家生活の心構えをお話しになる。
<この家でお世話になっているかぎり、出家などとても許してもらえそうにないと思っていたけれど、なんという幸いだろう。ついに尼になることができた。生きていた甲斐があった>
と浮舟の君はよろこぶ。



