ますます寝つけないので、昔のことを悲しく思い出していく。
<幼い私は父宮様のお顔も知らないまま、母君と継父君に連れられて東国へ行った。大人になってやっと異母姉の中君にお会いできたと思ったら、二条の院で匂宮様に見つかって、中君と気まずくなってしまった。また将来が見えなくなっているときに、薫の君が私を恋人にして、都に迎えようとしてくださったのだ。全力でそれにすがるべきだった。しかし私は匂宮様になびいてしまった。なんと愚かだったことか。匂宮様と関わったせいで、私はこんなふうにさすらうことになってしまったのだ>
宇治の山荘から川を渡って隠れ家へ行ったとき、宮様は橘の小島の常緑樹をご覧になって、「私たちの愛も永遠だ」とおっしゃった。
今思えば、そんな口先だけの情熱に感激していた自分が馬鹿馬鹿しい。
<薫の君はそれほどご愛情深いようには見えなかったけれど、穏やかに優しく接してくださった>
あのときも、このときも、とつぎつぎ思い出す。
<こんなふうに生きながらえていることを、薫の君には絶対に知られたくない。でも、いつかちらりとでよいから、もう一度お姿を拝見したい>
と思ってしまって、<あぁ、いけない>と打ち消す。
やっと鶏の声が聞こえた。
まもなく朝になるのだとほっとする。
<これが母君のお声だったら、どれほど安心できるだろう>
と思いながら、夜が明けていくのを待つ。
結局一睡もできなくて具合が悪い。
お迎えの女房も来ないので、そのまま大尼君のお部屋で横になっている。
大尼君はお年寄りらしく早起きでいらっしゃる。
朝食を用意させて、
「さぁ、あなたも早く召し上がれ」
とおっしゃるけれど、浮舟の君は食欲がない。
恐ろしいいびきをかいていた老女房たちに世話をされるのも嫌で、さりげなく断った。
それでも無理に進めてくるのだから、気が利かない人たちだこと。
<幼い私は父宮様のお顔も知らないまま、母君と継父君に連れられて東国へ行った。大人になってやっと異母姉の中君にお会いできたと思ったら、二条の院で匂宮様に見つかって、中君と気まずくなってしまった。また将来が見えなくなっているときに、薫の君が私を恋人にして、都に迎えようとしてくださったのだ。全力でそれにすがるべきだった。しかし私は匂宮様になびいてしまった。なんと愚かだったことか。匂宮様と関わったせいで、私はこんなふうにさすらうことになってしまったのだ>
宇治の山荘から川を渡って隠れ家へ行ったとき、宮様は橘の小島の常緑樹をご覧になって、「私たちの愛も永遠だ」とおっしゃった。
今思えば、そんな口先だけの情熱に感激していた自分が馬鹿馬鹿しい。
<薫の君はそれほどご愛情深いようには見えなかったけれど、穏やかに優しく接してくださった>
あのときも、このときも、とつぎつぎ思い出す。
<こんなふうに生きながらえていることを、薫の君には絶対に知られたくない。でも、いつかちらりとでよいから、もう一度お姿を拝見したい>
と思ってしまって、<あぁ、いけない>と打ち消す。
やっと鶏の声が聞こえた。
まもなく朝になるのだとほっとする。
<これが母君のお声だったら、どれほど安心できるだろう>
と思いながら、夜が明けていくのを待つ。
結局一睡もできなくて具合が悪い。
お迎えの女房も来ないので、そのまま大尼君のお部屋で横になっている。
大尼君はお年寄りらしく早起きでいらっしゃる。
朝食を用意させて、
「さぁ、あなたも早く召し上がれ」
とおっしゃるけれど、浮舟の君は食欲がない。
恐ろしいいびきをかいていた老女房たちに世話をされるのも嫌で、さりげなく断った。
それでも無理に進めてくるのだから、気が利かない人たちだこと。



