美しい月が出たころ、中将様がお越しになった。
<尼君のお留守にどうして。あぁ、嫌だ>
浮舟の君は部屋の奥深くに隠れる。
女房はなだめるように言う。
「そこまで警戒なさらなくても。あまりに潔癖でいらっしゃいますね。客席の方へ少しお寄りになって、中将様のお話をお聞きになるだけでよろしいのです。こんな月夜はご愛情がいっそう身にしみるものですよ」
浮舟の君はぞっとして震える。
女君もお留守だと女房から言わせたけれど、中将様は本当のことをご存じだった。
昼間、中将様のお手紙を届けにきた使者が、そのあたりをきちんと確認してご報告したらしい。
中将様は恨み言をたくさんおっしゃってから、
「お声が聞きたいとは申しません。ただ直接私の話を聞いてくださいませんか。その上で判断していただきたいのです」
とお願いなさるけれど、女君は出てこない。
<なんと冷淡な。恋の始まりにうってつけな夜だというのに、お心が揺れないのか>
さらに恨みながら中将様はおっしゃった。
「山里の秋の夜ですよ。この物寂しい空気を、あなたがお分かりにならないはずはないでしょう。私たちは物思いをする者同士ですから、きっと気が合うと存じます」
さすがに女房が代わりにお返事できる内容ではない。
「尼君がいらっしゃいませんから、姫君がお返事なさいませ」
と責めたてる。
浮舟の君は仕方なく、お返事か独り言か分からないくらいにつぶやいた。
「勝手に同士にされてしまったこと。そんな自覚はなかったのに」
これを女房が中将様にお伝えすると、
「少しでもこちらに出ていらっしゃるよう、そなたからも申し上げよ」
としつこくおっしゃる。
<尼君のお留守にどうして。あぁ、嫌だ>
浮舟の君は部屋の奥深くに隠れる。
女房はなだめるように言う。
「そこまで警戒なさらなくても。あまりに潔癖でいらっしゃいますね。客席の方へ少しお寄りになって、中将様のお話をお聞きになるだけでよろしいのです。こんな月夜はご愛情がいっそう身にしみるものですよ」
浮舟の君はぞっとして震える。
女君もお留守だと女房から言わせたけれど、中将様は本当のことをご存じだった。
昼間、中将様のお手紙を届けにきた使者が、そのあたりをきちんと確認してご報告したらしい。
中将様は恨み言をたくさんおっしゃってから、
「お声が聞きたいとは申しません。ただ直接私の話を聞いてくださいませんか。その上で判断していただきたいのです」
とお願いなさるけれど、女君は出てこない。
<なんと冷淡な。恋の始まりにうってつけな夜だというのに、お心が揺れないのか>
さらに恨みながら中将様はおっしゃった。
「山里の秋の夜ですよ。この物寂しい空気を、あなたがお分かりにならないはずはないでしょう。私たちは物思いをする者同士ですから、きっと気が合うと存じます」
さすがに女房が代わりにお返事できる内容ではない。
「尼君がいらっしゃいませんから、姫君がお返事なさいませ」
と責めたてる。
浮舟の君は仕方なく、お返事か独り言か分からないくらいにつぶやいた。
「勝手に同士にされてしまったこと。そんな自覚はなかったのに」
これを女房が中将様にお伝えすると、
「少しでもこちらに出ていらっしゃるよう、そなたからも申し上げよ」
としつこくおっしゃる。



