長谷寺へ行かれる尼君のお供をする人が多いので、小野の家の方は人が少なくなる。
出発なさる一行を見ながら、
<頼りにする尼君が出かけてしまわれた。ひとりで過ごすのは心細い>
と、浮舟の君はいつも以上に手持ち無沙汰になる。
そこへ中将様からお手紙が届いた。
浮舟の君のお世話のために残った女房が、
「ご覧なさいませ」
と勧めるけれど、女君は見ようとはしない。
それどころか、人が少なくて気が紛れることもないので、これまでやこれからを思ってますます気分が沈む。
「見ているこちらがつらくなってまいります。囲碁でもなさいませんか」
女房に言われて、退屈しのぎに打ってみようかと浮舟の君は思う。
「下手だけれど」
と言うので、女房は先手を譲った。
ところが浮舟の君は強い。
今度は女房が先手で打ったけれど、また浮舟の君が勝った。
「尼君のお帰りが待ち遠しい。姫君の囲碁を見ていただきたいわ。尼君もお強いのですよ。兄僧都様にもお勝ちになるほどです。僧都様だって囲碁に自信がおありのようですが、あなた様はそれ以上でいらっしゃいましょう。尼君と勝負なさったらどちらがお勝ちになるかしら」
年配の、しかも尼姿の女房だというのにはしゃいでいる。
<よけいなことをしてしまった>
浮舟の君は後悔して、具合が悪いと言って横になった。
女房は優しく声をかける。
「たまにはこんな遊びをなさって、朗らかにお過ごしなさいませ。せっかく若くてお美しいのに、もったいのうございますよ」
夕暮れ時の風が寂しく吹いていく。
「秋の夕暮れは物寂しいという。私はそれが分かるほど風流な人間ではないけれど、なぜか心は乱れ涙がこぼれる」
と、浮舟の君は紙に書いておいた。
出発なさる一行を見ながら、
<頼りにする尼君が出かけてしまわれた。ひとりで過ごすのは心細い>
と、浮舟の君はいつも以上に手持ち無沙汰になる。
そこへ中将様からお手紙が届いた。
浮舟の君のお世話のために残った女房が、
「ご覧なさいませ」
と勧めるけれど、女君は見ようとはしない。
それどころか、人が少なくて気が紛れることもないので、これまでやこれからを思ってますます気分が沈む。
「見ているこちらがつらくなってまいります。囲碁でもなさいませんか」
女房に言われて、退屈しのぎに打ってみようかと浮舟の君は思う。
「下手だけれど」
と言うので、女房は先手を譲った。
ところが浮舟の君は強い。
今度は女房が先手で打ったけれど、また浮舟の君が勝った。
「尼君のお帰りが待ち遠しい。姫君の囲碁を見ていただきたいわ。尼君もお強いのですよ。兄僧都様にもお勝ちになるほどです。僧都様だって囲碁に自信がおありのようですが、あなた様はそれ以上でいらっしゃいましょう。尼君と勝負なさったらどちらがお勝ちになるかしら」
年配の、しかも尼姿の女房だというのにはしゃいでいる。
<よけいなことをしてしまった>
浮舟の君は後悔して、具合が悪いと言って横になった。
女房は優しく声をかける。
「たまにはこんな遊びをなさって、朗らかにお過ごしなさいませ。せっかく若くてお美しいのに、もったいのうございますよ」
夕暮れ時の風が寂しく吹いていく。
「秋の夕暮れは物寂しいという。私はそれが分かるほど風流な人間ではないけれど、なぜか心は乱れ涙がこぼれる」
と、浮舟の君は紙に書いておいた。



