九月になって、尼君は長谷寺へお参りすることになさった。
「亡くなった姫君の代わりにかわいがる人がほしい」と長年願っていらっしゃったから、それが叶ってお礼参りをなさるの。
「あなたも一緒に行きましょう。人目を気になさっているのでしょうが、そんなに心配しなくても誰にも気づかれませんよ。お寺なんてどこでも同じとはいえ、やはり有名なお寺の仏様にお願いした方が、ご利益はあるものです」
尼君のお誘いを浮舟の君は断りたい。
<母君や乳母もそう言っていたから何度もお参りしたけれど、ご利益などなかったではないか。死にたいという願いさえ叶わず、これほどつらい目を味わっているというのに。それに半年近くお世話になっているとはいえ、私はまだ尼君を信用しきっていない。そういう人と一緒に遠くまで出かけるのは>
と、なんとなく恐ろしい。
そのままはっきりとは言えないので、
「近ごろ気分がすぐれず、道中が心配ですから」
とだけ言った。
<宇治の院でのことを思い出してしまわれるのだろう。また妖怪に憑りつかれたらと恐れていらっしゃるのだ>
尼君はそう思って、無理にはお誘いにならない。
「長谷寺の二本杉なんて見たくない。自分の頼りない境遇が悲しくなるばかりだもの」
と紙に書いてあったのを尼君は見つけなさった。
「根元がつながっためずらしい二本の杉のことですね。あの杉のように、一度お別れになったけれどまた会いたい人がいらっしゃるのね」
冗談めかしておっしゃると、浮舟の君はびっくりして顔を赤くする。
それがまた愛らしい。
「あなたの昔のことは分かりませんけれど、私はあなたを娘だと思っていますよ」
何度も言い聞かせていることを、尼君はまた優しくおっしゃった。
「亡くなった姫君の代わりにかわいがる人がほしい」と長年願っていらっしゃったから、それが叶ってお礼参りをなさるの。
「あなたも一緒に行きましょう。人目を気になさっているのでしょうが、そんなに心配しなくても誰にも気づかれませんよ。お寺なんてどこでも同じとはいえ、やはり有名なお寺の仏様にお願いした方が、ご利益はあるものです」
尼君のお誘いを浮舟の君は断りたい。
<母君や乳母もそう言っていたから何度もお参りしたけれど、ご利益などなかったではないか。死にたいという願いさえ叶わず、これほどつらい目を味わっているというのに。それに半年近くお世話になっているとはいえ、私はまだ尼君を信用しきっていない。そういう人と一緒に遠くまで出かけるのは>
と、なんとなく恐ろしい。
そのままはっきりとは言えないので、
「近ごろ気分がすぐれず、道中が心配ですから」
とだけ言った。
<宇治の院でのことを思い出してしまわれるのだろう。また妖怪に憑りつかれたらと恐れていらっしゃるのだ>
尼君はそう思って、無理にはお誘いにならない。
「長谷寺の二本杉なんて見たくない。自分の頼りない境遇が悲しくなるばかりだもの」
と紙に書いてあったのを尼君は見つけなさった。
「根元がつながっためずらしい二本の杉のことですね。あの杉のように、一度お別れになったけれどまた会いたい人がいらっしゃるのね」
冗談めかしておっしゃると、浮舟の君はびっくりして顔を赤くする。
それがまた愛らしい。
「あなたの昔のことは分かりませんけれど、私はあなたを娘だと思っていますよ」
何度も言い聞かせていることを、尼君はまた優しくおっしゃった。



