長谷寺でお祈りをして帰る途中、大尼君のご体調が悪くなってしまった。
まだ先は長いのに、とても小野の家までお帰りになれそうにない。
さいわい近くに知人の家があった。
そこで休ませてもらうことにしたけれど、ご体調はひどくなるばかり。
危篤状態だと僧都に連絡すると、僧都は山に籠って修行中だったにもかかわらず、
<老いた母が旅の途中で亡くなるなんて>
と駆けつけなさった。
さすがにもう寿命というお年だけれど、弟子と一緒になってご病気回復のお祈りをなさる。
その騒ぎを家の主が聞きつけて、心配そうに言った。
「今ここでお亡くなりになるのは困ります。私はもうすぐ山へ修行に行くつもりで、今は大切な準備期間なのです。不吉なことが起これば行けなくなってしまいます」
ひどい言い方のように思うかもしれないけれど、当時としてはかなり重要な問題なの。
僧都はそれなら仕方がないと納得なさった。
長く滞在できるような広い家でもなかったから、大尼君を乗り物に乗せて、少しずつ帰り道を進んでいく。
ところが今度は方角占いで悪い結果が出た。
小野の方角には進めなくなったから、どこかしばらく泊まれそうなところを探すしかない。
昔の帝の別荘で、「宇治の院」と呼ばれているお屋敷がこのあたりにある。
僧都はそこの管理人と知り合いなので、弟子に行かせて、
「一日か二日、泊めてもらえないだろうか」
とお尋ねになった。
弟子はみすぼらしい老人を連れて戻ってきた。
「管理人殿は昨日長谷寺へお参りにいかれました。私は留守番を頼まれた者でございます。お泊まりになるということでしたらすぐにお越しくださいませ。恐れ多くも朝廷が所有なさる別荘ですが、とくにどう使われてもいないのです。広い建物には、お参りの行き帰りの人たちがしょっちゅう泊まっていかれます」
今なら他の客はいないと老人は言うので、僧都は一安心なさる。
「それはよい。静かなところなら気楽に過ごせるだろう」
と、まず僧都と弟子たちが向かう。
大尼君と尼君はあとからゆっくりいらっしゃるわ。
まだ先は長いのに、とても小野の家までお帰りになれそうにない。
さいわい近くに知人の家があった。
そこで休ませてもらうことにしたけれど、ご体調はひどくなるばかり。
危篤状態だと僧都に連絡すると、僧都は山に籠って修行中だったにもかかわらず、
<老いた母が旅の途中で亡くなるなんて>
と駆けつけなさった。
さすがにもう寿命というお年だけれど、弟子と一緒になってご病気回復のお祈りをなさる。
その騒ぎを家の主が聞きつけて、心配そうに言った。
「今ここでお亡くなりになるのは困ります。私はもうすぐ山へ修行に行くつもりで、今は大切な準備期間なのです。不吉なことが起これば行けなくなってしまいます」
ひどい言い方のように思うかもしれないけれど、当時としてはかなり重要な問題なの。
僧都はそれなら仕方がないと納得なさった。
長く滞在できるような広い家でもなかったから、大尼君を乗り物に乗せて、少しずつ帰り道を進んでいく。
ところが今度は方角占いで悪い結果が出た。
小野の方角には進めなくなったから、どこかしばらく泊まれそうなところを探すしかない。
昔の帝の別荘で、「宇治の院」と呼ばれているお屋敷がこのあたりにある。
僧都はそこの管理人と知り合いなので、弟子に行かせて、
「一日か二日、泊めてもらえないだろうか」
とお尋ねになった。
弟子はみすぼらしい老人を連れて戻ってきた。
「管理人殿は昨日長谷寺へお参りにいかれました。私は留守番を頼まれた者でございます。お泊まりになるということでしたらすぐにお越しくださいませ。恐れ多くも朝廷が所有なさる別荘ですが、とくにどう使われてもいないのです。広い建物には、お参りの行き帰りの人たちがしょっちゅう泊まっていかれます」
今なら他の客はいないと老人は言うので、僧都は一安心なさる。
「それはよい。静かなところなら気楽に過ごせるだろう」
と、まず僧都と弟子たちが向かう。
大尼君と尼君はあとからゆっくりいらっしゃるわ。



