恋心を訴えるという雰囲気ではなくなってしまったので、中将様はお帰りになった。
山からの風に乗って、遠ざかっていく中将様の笛の音が聞こえる。
尼君は昔を思い出して一睡もできずにいらっしゃった。
翌朝早く、中将様からお手紙が届いた。
「昨夜はいろいろと心が乱れまして、ゆっくりとお話もせず失礼いたしました。亡き妻のことも、冷たい姫君のことも悲しくて。私の誠意をお分かりいただけるよう姫君をご説得ください。これほど必死になっておりますのは、姫君への思いがあふれそうだからです」
尼君は涙をこぼしながらお返事をお書きになる。
「あなた様の笛の音で昔を思い出し、お帰りになるときも涙が止まりませんでした。姫君のご様子は、老いた母が調子に乗って申し上げたとおりです。感情がないようにただぼんやりしておいでですから、あなた様のお気持ちがお分かりになるかどうか」
また代理の手紙なので、中将様はつまらなくお思いになる。
それからは頻繁に中将様からのお手紙が届くけれど、浮舟の君はなびくどころか、出家のことばかり考えている。
<あぁ、面倒だ。男はいつだって女を思いどおりにしようとする。薫の君も匂宮様もそうでいらっしゃった。早く尼になって、恋愛の対象外になりたい>
と、尼君をまねてお経を読む。
こんなふうに日々を過ごしているので、
<若い姫君なのだからもっと華やかになさってもよいのに、もともと暗いご性格なのだろう>
と尼君は諦めていらっしゃる。
顔立ちが美しいので、見ている分にはそれでも楽しい。
たまに少し微笑んだときなどは、めずらしくて尼君のお心が踊る。
山からの風に乗って、遠ざかっていく中将様の笛の音が聞こえる。
尼君は昔を思い出して一睡もできずにいらっしゃった。
翌朝早く、中将様からお手紙が届いた。
「昨夜はいろいろと心が乱れまして、ゆっくりとお話もせず失礼いたしました。亡き妻のことも、冷たい姫君のことも悲しくて。私の誠意をお分かりいただけるよう姫君をご説得ください。これほど必死になっておりますのは、姫君への思いがあふれそうだからです」
尼君は涙をこぼしながらお返事をお書きになる。
「あなた様の笛の音で昔を思い出し、お帰りになるときも涙が止まりませんでした。姫君のご様子は、老いた母が調子に乗って申し上げたとおりです。感情がないようにただぼんやりしておいでですから、あなた様のお気持ちがお分かりになるかどうか」
また代理の手紙なので、中将様はつまらなくお思いになる。
それからは頻繁に中将様からのお手紙が届くけれど、浮舟の君はなびくどころか、出家のことばかり考えている。
<あぁ、面倒だ。男はいつだって女を思いどおりにしようとする。薫の君も匂宮様もそうでいらっしゃった。早く尼になって、恋愛の対象外になりたい>
と、尼君をまねてお経を読む。
こんなふうに日々を過ごしているので、
<若い姫君なのだからもっと華やかになさってもよいのに、もともと暗いご性格なのだろう>
と尼君は諦めていらっしゃる。
顔立ちが美しいので、見ている分にはそれでも楽しい。
たまに少し微笑んだときなどは、めずらしくて尼君のお心が踊る。



