二条の院に到着なさると、気楽なご自分のお部屋へお入りになった。
<姫が宇治にいることを中君は知っていたはずなのに、私に秘密にしていたのだ>
と恨んでいらっしゃるの。
でも、横になってもお休みになれない。
寂しくなって、結局中君のお部屋へお越しになった。
中君は何もご存じなく、いつも以上にお美しい。
<めずらしくてかわいらしいと思った姫よりも、この人はいっそう美しい>
とご覧になりながら、姫が中君によく似ていたことを思い出してお胸が苦しくなる。
物思いなさっているご様子で、中君を連れてご寝室にお入りになった。
「気分が悪いのです。死んでしまいそうな気がして心細い。もし死に別れたら私はとても悲しいけれど、あなたはすぐに再婚なさるのでしょうね。薫の君がずいぶんあなたに熱心なようだから」
面倒なことをいやに真剣におっしゃると中君は思って、
「そんなことを薫の君がお聞きになったら、宮様に妙な告げ口をしたのかと私が疑わてしまいます。宮様はご冗談のおつもりでも、私のような不安定な立場の者にとっては冗談では済まないのですよ」
と、すねたようにお顔を背けてしまわれた。
宮様はいっそう真面目なお顔をなさる。
「私が恨んでも仕方のないことを、あなたはしていませんか。胸に手を当てて考えてごらんなさい。私はあなたにとって悪い夫だろうか。世間が非難するほど大切にしているつもりですよ。それなのにあなたは、私と誰かを比べて、私の方が下だと思っている。そういう運命なのだろうと分かってはいるが、隠し事をなさるのは悲しい」
そうおっしゃって、
<姫と再会できたのも運命なのだ>
と涙ぐまれる。
中君は事情がよくお分かりにならないまま、宮様をお気の毒に思われる。
<私と薫の君の、根も葉もない噂でもお聞きになったのだろうか>
とご想像なさるけれど、お返事のしようがないわ。
<正式な手順を踏んで妻になった私ではないから、平気で浮気もするだろうと思っていらっしゃるのだ。親戚でもない薫の君を頼りにして、ご厚意に甘えてきたのがいけなかった>
勘違いなさったままご自分を責めて悲しむご様子が可憐でいらっしゃる。
浮舟の君を見つけたことを、宮様はまだ中君にお話しになるつもりはない。
本当のところが分からない中君は、宮様とご一緒にいても気まずくて困ってしまわれる。
内裏の中宮様からお手紙が届いた。
宮様は驚きなさって、まだ中君を恨んでいるご様子でご自分の部屋にお戻りになった。
お手紙には、
「昨日あなたの居場所が分からなくなったことを、帝はとても心配なさっていました。参内してお顔を見せてちょうだい。もう久しくお会いしていませんから」
とある。
<重ねてご心配をおかけするのも心苦しいが、本当に気分が悪くなってきた>
と、宮様はその日は参内なさらない。
お見舞いに上がった貴族たちともお会いにならなかった。
夕方、薫の君がお見舞いに参上なさった。
宮様はお部屋にお呼びになる。
「ご病気とうかがいましたので参りました。中宮様もご心配していらっしゃいます。どのようなお具合ですか」
薫の君のお顔を見るなり、宮様はむかむかなさる。
<お堂を建てるなどと真面目ぶって宇治へ通っていたくせに、あの姫に会っていたのだ。あれほどかわいらしい人をよく平気で放っておけるな。かわいそうではないか>
いつもの宮様なら、薫の君の弱点を見つけたとばかりにからかわれるはずだけれど、今回は違う。
黙りこんでいらっしゃるのがお苦しそうに見えて、薫の君は本気で心配なさる。
「ご重病ではなくても、ご気分のすぐれない日がこれほど続くのはいけません。お大事になされませ」
と、誠実に申し上げてお帰りになった。
<気恥ずかしいほど立派な人だ。姫は薫の君と比べて私をどう思っただろう>
何につけても浮舟の君を思い出していらっしゃる。
<姫が宇治にいることを中君は知っていたはずなのに、私に秘密にしていたのだ>
と恨んでいらっしゃるの。
でも、横になってもお休みになれない。
寂しくなって、結局中君のお部屋へお越しになった。
中君は何もご存じなく、いつも以上にお美しい。
<めずらしくてかわいらしいと思った姫よりも、この人はいっそう美しい>
とご覧になりながら、姫が中君によく似ていたことを思い出してお胸が苦しくなる。
物思いなさっているご様子で、中君を連れてご寝室にお入りになった。
「気分が悪いのです。死んでしまいそうな気がして心細い。もし死に別れたら私はとても悲しいけれど、あなたはすぐに再婚なさるのでしょうね。薫の君がずいぶんあなたに熱心なようだから」
面倒なことをいやに真剣におっしゃると中君は思って、
「そんなことを薫の君がお聞きになったら、宮様に妙な告げ口をしたのかと私が疑わてしまいます。宮様はご冗談のおつもりでも、私のような不安定な立場の者にとっては冗談では済まないのですよ」
と、すねたようにお顔を背けてしまわれた。
宮様はいっそう真面目なお顔をなさる。
「私が恨んでも仕方のないことを、あなたはしていませんか。胸に手を当てて考えてごらんなさい。私はあなたにとって悪い夫だろうか。世間が非難するほど大切にしているつもりですよ。それなのにあなたは、私と誰かを比べて、私の方が下だと思っている。そういう運命なのだろうと分かってはいるが、隠し事をなさるのは悲しい」
そうおっしゃって、
<姫と再会できたのも運命なのだ>
と涙ぐまれる。
中君は事情がよくお分かりにならないまま、宮様をお気の毒に思われる。
<私と薫の君の、根も葉もない噂でもお聞きになったのだろうか>
とご想像なさるけれど、お返事のしようがないわ。
<正式な手順を踏んで妻になった私ではないから、平気で浮気もするだろうと思っていらっしゃるのだ。親戚でもない薫の君を頼りにして、ご厚意に甘えてきたのがいけなかった>
勘違いなさったままご自分を責めて悲しむご様子が可憐でいらっしゃる。
浮舟の君を見つけたことを、宮様はまだ中君にお話しになるつもりはない。
本当のところが分からない中君は、宮様とご一緒にいても気まずくて困ってしまわれる。
内裏の中宮様からお手紙が届いた。
宮様は驚きなさって、まだ中君を恨んでいるご様子でご自分の部屋にお戻りになった。
お手紙には、
「昨日あなたの居場所が分からなくなったことを、帝はとても心配なさっていました。参内してお顔を見せてちょうだい。もう久しくお会いしていませんから」
とある。
<重ねてご心配をおかけするのも心苦しいが、本当に気分が悪くなってきた>
と、宮様はその日は参内なさらない。
お見舞いに上がった貴族たちともお会いにならなかった。
夕方、薫の君がお見舞いに参上なさった。
宮様はお部屋にお呼びになる。
「ご病気とうかがいましたので参りました。中宮様もご心配していらっしゃいます。どのようなお具合ですか」
薫の君のお顔を見るなり、宮様はむかむかなさる。
<お堂を建てるなどと真面目ぶって宇治へ通っていたくせに、あの姫に会っていたのだ。あれほどかわいらしい人をよく平気で放っておけるな。かわいそうではないか>
いつもの宮様なら、薫の君の弱点を見つけたとばかりにからかわれるはずだけれど、今回は違う。
黙りこんでいらっしゃるのがお苦しそうに見えて、薫の君は本気で心配なさる。
「ご重病ではなくても、ご気分のすぐれない日がこれほど続くのはいけません。お大事になされませ」
と、誠実に申し上げてお帰りになった。
<気恥ずかしいほど立派な人だ。姫は薫の君と比べて私をどう思っただろう>
何につけても浮舟の君を思い出していらっしゃる。



