野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

(べん)(あま)から果物が届いた。
箱の(ふた)に、紅葉(もみじ)(つた)などを(かざ)って美しく()せてある。
()いた紙に何か書かれていた。
月が明るいので(かおる)(きみ)はお気づきになって、じっとご覧になる。

「お相手は変わってしまいましたが、昔のようにご滞在くださるのですね」
と、弁の尼が書いたみたい。
心変わりしたと弁の尼に思われたことが恥ずかしい一方で、大君(おおいぎみ)を思い出すと薫の君はお悲しくもなる。
「この山里(やまざと)も私の心も(さみ)しいままだが、隣にいる人だけが違う」
きちんとしたお返事ではなくただつぶやかれたのを、侍従(じじゅう)は弁の尼に伝えた。