野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

浮舟(うきふね)(きみ)のところに戻っていらっしゃった(かおる)(きみ)は、くつろいだ雰囲気でいっそうお美しい。
気恥ずかしいけれど隠れるわけにもいかないので、浮舟の君はもじもじしながら座っている。
(かみ)夫人(ふじん)が精一杯美しく()(かざ)らせている着物は、少し田舎(いなか)くさい。
<亡き大君(おおいぎみ)は古くなったお着物を着ていても上品で優雅でいらっしゃった>
と、薫の君はつい比べてしまわれる。
ただ、(かみ)は豊かよ。
正妻(せいさい)(おんな)()(みや)様にも(おと)らないとご覧になった。

冷静に考えると、浮舟の君の(あつか)い方は難しい。
<今すぐ妻として三条(さんじょう)の屋敷に迎えるのは人聞きが悪いだろう。内親王(ないしんのう)様を妻にしてまだ半年ほどしか()っていないのだ。しかし女房(にょうぼう)のひとりとしてそばに置くのも嫌だ。しばらくこの山荘(さんそう)に隠して、ときどき会いにこよう>

そうお決めになったけれど、宇治(うじ)は気軽にお越しになれる距離ではない。
<会えずにいれば(さみ)しいだろう>
お胸がぎゅっとなって、熱心に浮舟の君に話しかけなさる。
亡き(はち)(みや)様のことなど、昔のお話をいろいろとおっしゃるけれど、浮舟の君はただ遠慮(えんりょ)がちに恥ずかしがっている。

手ごたえのなさにがっかりしつつも、
<物は考えようだ。頼りない性格なら教えたことを素直に聞くだろう。田舎(いなか)で覚えた風流(ふうりゅう)もどきを見せつけて、品もなくはしゃぐような性格なら、大君の身代わりにはならないのだから>
と薫の君は思い直していらっしゃる。