あっという間に夜が明けてしまったような気がなさる。
鶏の声は聞こえないけれど、大通りが近いので物売りたちの声がする。
こういうところにお泊まりになるのは、薫の君にはめずらしくておもしろいことなの。
一晩中見回りをしていた男たちが、持ち場を離れてどこかへ行った気配がする。
薫の君はご自分の乗り物を濡れ縁のところまで寄せさせなさった。
浮舟の君を抱きあげて乗せてしまわれる。
女房たちはびっくりして、
「どうなさるおつもりかしら」
とうろたえている。
「何かお考えがおありなのでしょう。ご安心なさい」
弁の尼は浮舟の君に同情しながらも、女房たちを落ち着かせるように言った。
それから薫の君に申し上げる。
「お供するべきでしょうが、私はここでお見送りさせていただきます。私が都に来ていることはすぐに中君のお耳にも入るでしょうから、そちらへご挨拶に上がりませんと」
薫の君としては、浮舟の君とこういうことになったことを、まだ中君に知られたくない。
なんだか気恥ずかしいような気がなさるの。
「それはあとから謝ればよい。そなたがいなくては困る」
弁の尼へお命じになってから、女房たちの方を向いて、
「誰か姫君にお供しなさい」
とおっしゃった。
侍従と呼ばれている女房が、弁の尼につづいておずおずと乗り物に乗る。
あっけにとられた乳母たちを残して乗り物は門から出ていった。
鶏の声は聞こえないけれど、大通りが近いので物売りたちの声がする。
こういうところにお泊まりになるのは、薫の君にはめずらしくておもしろいことなの。
一晩中見回りをしていた男たちが、持ち場を離れてどこかへ行った気配がする。
薫の君はご自分の乗り物を濡れ縁のところまで寄せさせなさった。
浮舟の君を抱きあげて乗せてしまわれる。
女房たちはびっくりして、
「どうなさるおつもりかしら」
とうろたえている。
「何かお考えがおありなのでしょう。ご安心なさい」
弁の尼は浮舟の君に同情しながらも、女房たちを落ち着かせるように言った。
それから薫の君に申し上げる。
「お供するべきでしょうが、私はここでお見送りさせていただきます。私が都に来ていることはすぐに中君のお耳にも入るでしょうから、そちらへご挨拶に上がりませんと」
薫の君としては、浮舟の君とこういうことになったことを、まだ中君に知られたくない。
なんだか気恥ずかしいような気がなさるの。
「それはあとから謝ればよい。そなたがいなくては困る」
弁の尼へお命じになってから、女房たちの方を向いて、
「誰か姫君にお供しなさい」
とおっしゃった。
侍従と呼ばれている女房が、弁の尼につづいておずおずと乗り物に乗る。
あっけにとられた乳母たちを残して乗り物は門から出ていった。



