野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

秋が深まって(もの)(さみ)しい空気になってくると、(かおる)(きみ)宇治(うじ)を思い出される。
ちょうどお堂が完成したという連絡があったので、そのご確認がてら宇治へ行かれた。
しばらくぶりの宇治で、紅葉(こうよう)をおもしろくご覧になる。

解体した山荘(さんそう)跡地(あとち)には、新しく立派な山荘が建っている。
亡き(はち)(みや)様は僧侶のようなご生活をお求めだったから、昔の山荘はもっと質素だった。
薫の君はそれを(なつ)かしく恋しく思い出して、
<そのままにしておいた方がよかったかもしれない>
後悔(こうかい)なさる。

もともと山荘にあった質素(しっそ)な家具は、お堂に付属(ふぞく)する僧侶の家で使わせなさる。
新築(しんちく)した山荘には山里(やまざと)らしい新しい家具をお入れになった。
あまり質素にはなさらず、美しく格式高く整っている。