守夫人はこういうときのために小さな家を用意していた。
二条の院からもそれほど遠くないあたりよ。
ただ、まだ内部は整っていなくて、住めなくはないけれど家具も少ない。
守夫人は浮舟の君をとりあえずその家に入れて、困り顔で言う。
「あなたをどうしてあげたらよいものか。あれこれ悩んでいるけれど、まったく答えが出ないのです。うまくいかない人生なのに長生きしてしまったことがつらい。私ひとりなら、こんな落ちぶれた身分でも我慢してやっていきますけれどね、あなたまで私と同じ人生にするわけにはいきません。
とにかくこれ以上二条の院にいるのはよくないと思ってここへ連れてきたのです。亡き八の宮様に冷たく扱われたというのに、懲りもせずその姫君でいらっしゃる中君に近づいた上、次はあなたが肩身の狭い立場になれば、今度こそ私たち母娘は世間の笑い者になってしまう。
むさくるしいところだけれど、しばらくここでこっそりお暮らしなさい。私がなんとかよいようにしてあげますから」
そう言って守夫人は自宅に帰ろうとする。
浮舟の君は泣いてしまう。
<私の居場所はどこにもない。母君にも迷惑をおかけしている>
と打ちひしがれている。
守夫人は、もちろん娘がかわいくないわけではないわ。
むしろ立派な血筋の浮舟の君を大切に思って、どうにか無事によい結婚をさせてあげたいと願っている。
それなのに匂宮様のせいで妙な噂が立って、世間から軽率な娘だと思われては困るの。
自宅に連れて帰るのが一番無難だということも分かっている。
でも、妹娘と少将様が大きな顔で新婚生活を送っている片隅に、ひっそりと浮舟の君を押しこめておきたくない。
しっかりした母親だけれど、少し気が強いところがあるのよね。
離れて暮らしたことなどほとんどないので、母娘はお互いに心細く思う。
「この家はまだ内部が十分にできていませんからね、夜はとくに心配です。女房があちこちにいますから、恐くなったらお部屋にお呼びなさい。警備の者にもよく言っておくけれど、本当は私がついていてあげたい。でも、家では守が私に腹を立てていますから、帰らないわけにもいかないのですよ」
と、守夫人は泣きながら帰っていった。
二条の院からもそれほど遠くないあたりよ。
ただ、まだ内部は整っていなくて、住めなくはないけれど家具も少ない。
守夫人は浮舟の君をとりあえずその家に入れて、困り顔で言う。
「あなたをどうしてあげたらよいものか。あれこれ悩んでいるけれど、まったく答えが出ないのです。うまくいかない人生なのに長生きしてしまったことがつらい。私ひとりなら、こんな落ちぶれた身分でも我慢してやっていきますけれどね、あなたまで私と同じ人生にするわけにはいきません。
とにかくこれ以上二条の院にいるのはよくないと思ってここへ連れてきたのです。亡き八の宮様に冷たく扱われたというのに、懲りもせずその姫君でいらっしゃる中君に近づいた上、次はあなたが肩身の狭い立場になれば、今度こそ私たち母娘は世間の笑い者になってしまう。
むさくるしいところだけれど、しばらくここでこっそりお暮らしなさい。私がなんとかよいようにしてあげますから」
そう言って守夫人は自宅に帰ろうとする。
浮舟の君は泣いてしまう。
<私の居場所はどこにもない。母君にも迷惑をおかけしている>
と打ちひしがれている。
守夫人は、もちろん娘がかわいくないわけではないわ。
むしろ立派な血筋の浮舟の君を大切に思って、どうにか無事によい結婚をさせてあげたいと願っている。
それなのに匂宮様のせいで妙な噂が立って、世間から軽率な娘だと思われては困るの。
自宅に連れて帰るのが一番無難だということも分かっている。
でも、妹娘と少将様が大きな顔で新婚生活を送っている片隅に、ひっそりと浮舟の君を押しこめておきたくない。
しっかりした母親だけれど、少し気が強いところがあるのよね。
離れて暮らしたことなどほとんどないので、母娘はお互いに心細く思う。
「この家はまだ内部が十分にできていませんからね、夜はとくに心配です。女房があちこちにいますから、恐くなったらお部屋にお呼びなさい。警備の者にもよく言っておくけれど、本当は私がついていてあげたい。でも、家では守が私に腹を立てていますから、帰らないわけにもいかないのですよ」
と、守夫人は泣きながら帰っていった。



