野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

それからしばらくお話をなさって、おふたりはやっと明け方に横におなりになった。
中君(なかのきみ)浮舟(うきふね)(きみ)を隣に寝かせて、亡き父宮(ちちみや)様のことを少しお話しなさる。
浮舟の君は父宮様が恋しくて、お会いすることなく死に別れてしまったことを悲しく思った。

昨夜の(さわ)ぎを知っている女房(にょうぼう)たちは、実際のところを気にしている。
匂宮(におうのみや)様が浮舟の君にお手をおつけになったかどうかで、このご姉妹の関係はがらりと変わってきてしまうもの。
初心(うぶ)姫君(ひめぎみ)に見えるけれど、実際のところ、宮様と関係を持たれたのかしら。もしそうなら、奥様がどれほどかわいがりなさっても無駄(むだ)でしょう。どちらにとってもお気の毒だこと」
宮様のご性格からして、きっと関係があっただろうと想像しているみたい。

右近(うこん)は否定する。
「そうでもないと思いますよ。姫君の乳母(めのと)が私に説明してくれましたけれどね、あの(くち)ぶりに(うそ)やごまかしはないような感じがしました。宮様も『せっかくだったのに何もできなかった』とつぶやいていらっしゃいましたし。でもそれは宮様の作戦かしら。
いずれにせよ、昨夜中君のお部屋に上がられたとき、姫君はとてもおっとりしたご様子でしたもの。何かあった直後のようには見えませんでしたよ」
ささやき合いながら気の毒がっている。