野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

<何か姫がよろこびそうなものを>
と、中君(なかのきみ)は物語の絵をお出しになった。
女房(にょうぼう)に文を読ませて、ご姉妹は向かいあって絵をご覧になる。
浮舟(うきふね)(きみ)は美しい絵に心()かれて、じっと見入っている。
その顔を中君はさりげなくお確かめになる。
欠点のない、非常に整ったお顔立ちよ。

(ひたい)や目元は(にお)い立つように美しく、おっとりとした上品な雰囲気は、まさに大君(おおいぎみ)にうりふたつ。
中君は絵よりも浮舟の君から目が離せなくていらっしゃる。
<なんということだ。こんなにも生き写しなことがあるだろうか。きっと亡き父宮(ちちみや)様によく似ているからだろう。姉君(あねぎみ)は父親似で私は母親似だと(ろう)女房(にょうぼう)たちが言っていた。それでもこれほど似ているなんて>
涙ぐみながら異母妹君(いもうとぎみ)をご覧になる。

<姉君はこの上なく()(だか)く上品でありながら、優しさや親しみやすさもおありだった。そして、こちらがはらはらするほど可憐(かれん)でいらっしゃった。姉君に比べると、この姫にはぎこちないところがある。育った階級が違うせいで()(おく)れしているのだろう。たっぷりとした優雅さはすぐに身につくものではない。その点ではまだ姉君に(およ)ばないけれど、貴族らしい雰囲気を出せるようになれば、(かおる)(きみ)が恋人になさってもまったくおかしくない人だ>
妹を世話する姉君のお心でお考えになる。