<姫がかわいそうだ。嫌な思いをしただろう>
中君は同情なさって、何も知らないふりで浮舟の君をお部屋へお呼びになった。
「宮様は中宮様のお見舞いに参内なさって、今夜はお帰りにならないようです。髪を洗ったら疲れてしまったけれど、横になる気にもならないから、こちらへ来て話し相手になってくれませんか。ご退屈でしょう」
と、さりげなくお誘いになる。
浮舟の君はとてもそんな気分ではない。
「具合が悪うございますので、また改めまして」
というお返事を乳母がお伝えする。
「どんなお具合なのですか」
中君がお尋ねになると、
「どこがどうというわけではないのですが、ただとても苦しいのです」
と、また乳母を通じてお返事する。
中君の女房たちは目を見合わせて、
「あんなことがあったのですもの。気まずくて中君の御前に出ていらっしゃれないのも当然ですよ」
とひそひそ言う。
中君は薫の君のことを気になさる。
<それにしても気の毒なことになった。せっかく薫の君が恋人にしたいとおっしゃっていたのに、このことを知ったら姫を軽蔑なさるだろう。これが宮様なら、嫉妬して騒ぎたてても最後はお許しになるはずだ。ご自分が恋多き人だから、相手の過ちも大目に見て、潔癖に切り捨てることはなさらない。
しかし薫の君は違う。相手を責めることはせず、お心のうちで静かに、ご自分にふさわしいかどうか判断なさる。気高くて落ち着きのあるご態度とも言えるけれど、姫にとっては厳しいことになった。
長年存在さえ知らない異母妹だったけれど、会ってみたら放っておけないほどかわいらしい。幸せになってほしいのに世の中は難しいものだ。私だって似たような境遇になっていたとしてもおかしくなかった。今も完全に幸せとは思えないが、あの姫に比べたらずいぶん恵まれているのだろう。
あとはなんとかして薫の君が姫とうまくいって、私への恋心を忘れてくださったら。そうすれば何も気がかりなことはなくなる>
豊かなお髪なので、洗うとなかなか乾かない。
女房たちに囲まれてじっと座っていらっしゃるのはお苦しそう。
乾かしやすいように肌着だけになったお姿は、ほっそりしていてお美しい。
中君は同情なさって、何も知らないふりで浮舟の君をお部屋へお呼びになった。
「宮様は中宮様のお見舞いに参内なさって、今夜はお帰りにならないようです。髪を洗ったら疲れてしまったけれど、横になる気にもならないから、こちらへ来て話し相手になってくれませんか。ご退屈でしょう」
と、さりげなくお誘いになる。
浮舟の君はとてもそんな気分ではない。
「具合が悪うございますので、また改めまして」
というお返事を乳母がお伝えする。
「どんなお具合なのですか」
中君がお尋ねになると、
「どこがどうというわけではないのですが、ただとても苦しいのです」
と、また乳母を通じてお返事する。
中君の女房たちは目を見合わせて、
「あんなことがあったのですもの。気まずくて中君の御前に出ていらっしゃれないのも当然ですよ」
とひそひそ言う。
中君は薫の君のことを気になさる。
<それにしても気の毒なことになった。せっかく薫の君が恋人にしたいとおっしゃっていたのに、このことを知ったら姫を軽蔑なさるだろう。これが宮様なら、嫉妬して騒ぎたてても最後はお許しになるはずだ。ご自分が恋多き人だから、相手の過ちも大目に見て、潔癖に切り捨てることはなさらない。
しかし薫の君は違う。相手を責めることはせず、お心のうちで静かに、ご自分にふさわしいかどうか判断なさる。気高くて落ち着きのあるご態度とも言えるけれど、姫にとっては厳しいことになった。
長年存在さえ知らない異母妹だったけれど、会ってみたら放っておけないほどかわいらしい。幸せになってほしいのに世の中は難しいものだ。私だって似たような境遇になっていたとしてもおかしくなかった。今も完全に幸せとは思えないが、あの姫に比べたらずいぶん恵まれているのだろう。
あとはなんとかして薫の君が姫とうまくいって、私への恋心を忘れてくださったら。そうすれば何も気がかりなことはなくなる>
豊かなお髪なので、洗うとなかなか乾かない。
女房たちに囲まれてじっと座っていらっしゃるのはお苦しそう。
乾かしやすいように肌着だけになったお姿は、ほっそりしていてお美しい。



