野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

夕方になって中君(なかのきみ)のお部屋へお戻りになると、中君は別の場所でお(ぐし)を洗わせていらっしゃるところだった。
そちらで働いている女房(にょうぼう)以外は自分の部屋に下がってしまったようで、(みや)様のお話し相手になる人がいない。
「これでは退屈(たいくつ)でつまらない」
女童(めのわらわ)を通じて宮様がおっしゃると、お髪を洗っている女房から申し訳なさそうな返事が返ってきた。
「いつもは宮様がお留守の日にお済ませなさるのですが、ここ何日かは面倒がられまして。これ以上(さき)()ばしにいたしますと、お髪を洗うのに縁起(えんぎ)がよくない月になりますから」