「ではその姫に、『亡き大君の身代わりにしたい』という私の望みをお伝えください。大君がお亡くなりになってから、ずっと身代わりになる人を探していたのです。浅はかな思いつきだと受け取られないように、それと私が恥をかかないように、うまく仲介してくださいませ。何分恋愛事に不慣れで、みっともないお願いですけれど」
そう言って薫の君はお帰りになった。
守夫人は、すっかり薫の君に魅了されている。
「なんという理想的な男性だろう」
とほめそやす。
乳母がたびたび「姫様を薫の君に差し上げては」と言っていたときは、とんでもないことだと思っていた。
でも、こうしてすばらしいお姿を拝見すると、
<七夕の織姫のようでもかまわない。年に一度でお会いできるだけでもうれしくなる彦星様だ>
と思ってしまう。
<姫はそこらの男には惜しい美しさだというのに、よくもまぁ少将様などをありがたがって婿にしようとしたものよ。それもこれも田舎くさい夫を基準に男性を見る癖がついていたせいだ>
今ではあのころの自分に悔しくなる。
薫の君がお座りになっていたあたりからは、すばらしい残り香が漂う。
どんな言葉にしても嘘っぽくなってしまうほどのよい香りよ。
薫の君を見慣れている女房たちも、香りのすばらしさには毎回新鮮に感動する。
「仏様もお香はお好きですものね。幼いころから仏教の修行を熱心になさっていたおかげで、あんなによい香りがお体から漂うのでしょう」
「前世によほどすばらしい行いをなさったにちがいありませんよ」
口々にほめるのを、守夫人はうなずきながら聞いている。
そう言って薫の君はお帰りになった。
守夫人は、すっかり薫の君に魅了されている。
「なんという理想的な男性だろう」
とほめそやす。
乳母がたびたび「姫様を薫の君に差し上げては」と言っていたときは、とんでもないことだと思っていた。
でも、こうしてすばらしいお姿を拝見すると、
<七夕の織姫のようでもかまわない。年に一度でお会いできるだけでもうれしくなる彦星様だ>
と思ってしまう。
<姫はそこらの男には惜しい美しさだというのに、よくもまぁ少将様などをありがたがって婿にしようとしたものよ。それもこれも田舎くさい夫を基準に男性を見る癖がついていたせいだ>
今ではあのころの自分に悔しくなる。
薫の君がお座りになっていたあたりからは、すばらしい残り香が漂う。
どんな言葉にしても嘘っぽくなってしまうほどのよい香りよ。
薫の君を見慣れている女房たちも、香りのすばらしさには毎回新鮮に感動する。
「仏様もお香はお好きですものね。幼いころから仏教の修行を熱心になさっていたおかげで、あんなによい香りがお体から漂うのでしょう」
「前世によほどすばらしい行いをなさったにちがいありませんよ」
口々にほめるのを、守夫人はうなずきながら聞いている。



