匂宮様がご出発なさると、守夫人は姫君を連れて中君のお部屋に上がった。
覗き見した宮様のお美しさを言葉を尽くしてほめそやすので、
<田舎っぽい人だこと>
と中君は苦笑いなさる。
「八の宮様のご正妻が、生まれたばかりのあなた様を遺してお亡くなりになったときには、この小さなご姉妹はどうなってしまわれるのだろうかと誰もかれも嘆いたものです。恐れ多くも八の宮様まで、ふつうの父親と同じように混乱なさいました。それでもあなた様はご運の強い方で、宇治という田舎でもご無事に成人なさったのですね。あとは大君さえお元気でいてくださっていたらと残念でございますけれど」
守夫人は泣きながら申し上げた。
中君も泣いておっしゃる。
「本当に姉君のことは悲しく思います。世の中のたいていのつらいことは、こうして生きながらえているとそれなりに慰められるものだけれど、姉君のことはそうはいかない。両親と死に別れた不幸も、とくに母君はお顔も知らないから、世間によくある不幸だと納得できなくもないのだけれど、姉君の場合はそれもできない。やはり姉君を亡くした悲しみは消えないでしょう。
姉君の恋人だった薫の君も、いまだにお悲しみから抜け出せずにいらっしゃるらしいのです。権大納言へのご出世も、帝の姫君とのご結婚も、あまりうれしくはお思いになれないようで。それだけご愛情が深かったのだと思うと、よけいにお亡くなりになったことが残念に思われます」
守夫人は、出世や内親王様との結婚がうれしくないというのが信じられない。
「薫の君は少し思い上がっておられるのではありませんか。帝が異常なほどかわいがって大切にしていらっしゃるとか。それでご出世もご降嫁もたいしたことがないように思われるのでしょう。もし大君が生きておいでだったら、このご降嫁はお断りになったかもしれませんね」
覗き見した宮様のお美しさを言葉を尽くしてほめそやすので、
<田舎っぽい人だこと>
と中君は苦笑いなさる。
「八の宮様のご正妻が、生まれたばかりのあなた様を遺してお亡くなりになったときには、この小さなご姉妹はどうなってしまわれるのだろうかと誰もかれも嘆いたものです。恐れ多くも八の宮様まで、ふつうの父親と同じように混乱なさいました。それでもあなた様はご運の強い方で、宇治という田舎でもご無事に成人なさったのですね。あとは大君さえお元気でいてくださっていたらと残念でございますけれど」
守夫人は泣きながら申し上げた。
中君も泣いておっしゃる。
「本当に姉君のことは悲しく思います。世の中のたいていのつらいことは、こうして生きながらえているとそれなりに慰められるものだけれど、姉君のことはそうはいかない。両親と死に別れた不幸も、とくに母君はお顔も知らないから、世間によくある不幸だと納得できなくもないのだけれど、姉君の場合はそれもできない。やはり姉君を亡くした悲しみは消えないでしょう。
姉君の恋人だった薫の君も、いまだにお悲しみから抜け出せずにいらっしゃるらしいのです。権大納言へのご出世も、帝の姫君とのご結婚も、あまりうれしくはお思いになれないようで。それだけご愛情が深かったのだと思うと、よけいにお亡くなりになったことが残念に思われます」
守夫人は、出世や内親王様との結婚がうれしくないというのが信じられない。
「薫の君は少し思い上がっておられるのではありませんか。帝が異常なほどかわいがって大切にしていらっしゃるとか。それでご出世もご降嫁もたいしたことがないように思われるのでしょう。もし大君が生きておいでだったら、このご降嫁はお断りになったかもしれませんね」



