野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

(いもうと)(むすめ)婿(むこ)ばかりか部屋まで取られ、母親と乳母(めのと)はうんざりしている。
常陸(ひたち)(かみ)はこちらを(うら)んでいるようなので、母親は新婦の世話をしてやる気にもなれない。
とにかく屋敷から出たくて、中君(なかのきみ)にお手紙を書いた。

「とくに用件もなくご連絡しては()()れしいかと、これまでご無沙汰(ぶさた)しておりました。実は、折り入ってお願いしたいことがございます。ちょっとした事情がありまして、しばらく娘と一緒に自宅を離れたいのです。二条(にじょう)(いん)に目立たないように暮らせる部屋をご用意いただけませんでしょうか。ふがいない私の力だけでは娘を守ってやることができず、つらい思いをさせております。こういうときに頼りにさせていただける方として、まずあなた様が思い浮かびまして」

泣きながら書いたらしい手紙を、中君は同情してご覧になる。
<亡き父宮(ちちみや)様が実子(じっし)とはお認めにならなかった娘なのだから、私が勝手に身内(みうち)(あつか)いするのも気が引ける。とはいえ何か困っているようだ。これ以上没落(ぼつらく)した話を聞かされるのも心苦しい。血筋(ちすじ)としては宮家(みやけ)の姫なのだから、どこをさすらっているか分からないほどになっては、さすがに父宮様も悲しまれるだろう>
どうしたらよいかとお悩みになる。