母親と乳母が嘆きあっているところへ、元常陸の守があわただしくやって来た。
「こちらにはよい女房がたくさんいるようですね。ちょっと新婦のところに借りていきますよ。寝室も新しくしてあるのだね。ちょうどよい。急な結婚になってしまったから、新婚夫婦にはこの部屋を使わせよう」
図々しく言いながら、自分で飾りつけをしていく。
姫君の結婚のために、母親がすみずみまで美しく整えておいたのよ。
そこへついたてや棚をいくつも持ってきた。
多ければよいというものでもないのに、邪魔でしかないわ。
張りきって準備しているから、母親は見苦しいと思っても何も言わない。
自分は手を引くと決めたのだもの。
守がずかずかと部屋に入りこんできたので、姫君は北側の部屋に隠れている。
守は自分の娘の部屋へ戻って言う。
「母君はやはりそなたのお世話をするつもりはないようだ。ご自分が生んだ子なのだから、結婚するとなれば母親らしいことをしてくれるだろうと期待していたが。まぁ、気にせずともよい。世間にはもともと母親のいない子だっているのだ」
妹娘を慰めて世話をする。
着飾った妹娘はそれほど悪くもない。
十五、六歳だけれどまだ小柄で、姫君らしいふっくらとした体つきをしている。
髪が美しくて長い。
切りそろえた毛先も豊かなの。
守はにこにこしながら髪を撫でて言う。
「そなたの婿になる少将様は、家柄も人柄もすばらしい方だよ。もともとは母君が連れてきたお子の婿になるはずだったのだがね。事情があってその話はなくなってしまった。しかし、どこの家も婿にしたがるような立派な若者だから、よその家に取られてしまうのは惜しいと思って、そなたの婿にすることにした。お会いするのを楽しみにしていなさい」
仲介役の男が言ったことをすっかり信じているのだから、愚かな父親よね。
さて、そのすばらしい婿君は、義父が熱心に世話してくれそうなことに満足している。
希望どおりになったと安心して、姫君と結婚するはずだった日に、妹娘の方へ通いはじめた。
「こちらにはよい女房がたくさんいるようですね。ちょっと新婦のところに借りていきますよ。寝室も新しくしてあるのだね。ちょうどよい。急な結婚になってしまったから、新婚夫婦にはこの部屋を使わせよう」
図々しく言いながら、自分で飾りつけをしていく。
姫君の結婚のために、母親がすみずみまで美しく整えておいたのよ。
そこへついたてや棚をいくつも持ってきた。
多ければよいというものでもないのに、邪魔でしかないわ。
張りきって準備しているから、母親は見苦しいと思っても何も言わない。
自分は手を引くと決めたのだもの。
守がずかずかと部屋に入りこんできたので、姫君は北側の部屋に隠れている。
守は自分の娘の部屋へ戻って言う。
「母君はやはりそなたのお世話をするつもりはないようだ。ご自分が生んだ子なのだから、結婚するとなれば母親らしいことをしてくれるだろうと期待していたが。まぁ、気にせずともよい。世間にはもともと母親のいない子だっているのだ」
妹娘を慰めて世話をする。
着飾った妹娘はそれほど悪くもない。
十五、六歳だけれどまだ小柄で、姫君らしいふっくらとした体つきをしている。
髪が美しくて長い。
切りそろえた毛先も豊かなの。
守はにこにこしながら髪を撫でて言う。
「そなたの婿になる少将様は、家柄も人柄もすばらしい方だよ。もともとは母君が連れてきたお子の婿になるはずだったのだがね。事情があってその話はなくなってしまった。しかし、どこの家も婿にしたがるような立派な若者だから、よその家に取られてしまうのは惜しいと思って、そなたの婿にすることにした。お会いするのを楽しみにしていなさい」
仲介役の男が言ったことをすっかり信じているのだから、愚かな父親よね。
さて、そのすばらしい婿君は、義父が熱心に世話してくれそうなことに満足している。
希望どおりになったと安心して、姫君と結婚するはずだった日に、妹娘の方へ通いはじめた。



