何も知らない母親は、姫君の結婚に向けて最後の仕上げをしている。
女房たちによい着物を着せ、部屋の飾りつけにも細かく気を遣う。
髪を洗って整えた姫君は、少将様程度の男と結婚させるのは惜しいほど美しい。
<かわいそうな姫だ。亡き八の宮様がご自分のお子と認めてくださっていれば、お望みどおり薫の君に差し上げることもできただろうに。しかし私ひとりがそう考えて悔しがっていても、世間はたかが地方長官の娘としか思ってくれない。それどころか、宮様のお子と知れば軽蔑するかもしれないのだから悲しい>
この期に及んでも、本当に少将様と結婚させてよいのか悩む。
「身分がそこそこで、人柄もよさそうな少将様がせっかく求婚してくださったのだから」と、夫にも相談せずに姫君のご結婚を決めてしまったの。
あの口のうまい仲介役に、すっかり乗せられてしまったのよね。
結婚が明日明後日というところまで近づいた。
母親は気持ちが落ち着かず、屋敷のなかをうろうろしている。
そこへ守がやって来た。
「忙しそうですね。私の娘の婿を横取りするつもりで準備なさっているのだろうか。少将様はもう、あなたの尊い姫君をお望みになってはいませんよ。私と血のつながった娘の方がよいと仰せなのです。
ご自分の連れ子をうまく結婚させたと思っていたかもしれないが、少将様は私の子だと勘違いして求婚なさったらしい。『血のつながっていない娘なら、この縁談はなかったことにしてくれ』とおっしゃったから、それならいっそ本物の娘を差し上げようと思ってね。そういうわけで、あなたが決めていた結婚の日に、少将様は私の娘と結婚なさる。あの子だってあなたが生んだ子なのだから、よろこぶとよい」
相手の気持ちなど考えもしない人だから、憎たらしくずけずけと言う。
母親は情けなくて声も出ない。
何もかもが嫌になって、涙がこぼれそうになる。
そっと姫君の部屋に戻っていった。
女房たちによい着物を着せ、部屋の飾りつけにも細かく気を遣う。
髪を洗って整えた姫君は、少将様程度の男と結婚させるのは惜しいほど美しい。
<かわいそうな姫だ。亡き八の宮様がご自分のお子と認めてくださっていれば、お望みどおり薫の君に差し上げることもできただろうに。しかし私ひとりがそう考えて悔しがっていても、世間はたかが地方長官の娘としか思ってくれない。それどころか、宮様のお子と知れば軽蔑するかもしれないのだから悲しい>
この期に及んでも、本当に少将様と結婚させてよいのか悩む。
「身分がそこそこで、人柄もよさそうな少将様がせっかく求婚してくださったのだから」と、夫にも相談せずに姫君のご結婚を決めてしまったの。
あの口のうまい仲介役に、すっかり乗せられてしまったのよね。
結婚が明日明後日というところまで近づいた。
母親は気持ちが落ち着かず、屋敷のなかをうろうろしている。
そこへ守がやって来た。
「忙しそうですね。私の娘の婿を横取りするつもりで準備なさっているのだろうか。少将様はもう、あなたの尊い姫君をお望みになってはいませんよ。私と血のつながった娘の方がよいと仰せなのです。
ご自分の連れ子をうまく結婚させたと思っていたかもしれないが、少将様は私の子だと勘違いして求婚なさったらしい。『血のつながっていない娘なら、この縁談はなかったことにしてくれ』とおっしゃったから、それならいっそ本物の娘を差し上げようと思ってね。そういうわけで、あなたが決めていた結婚の日に、少将様は私の娘と結婚なさる。あの子だってあなたが生んだ子なのだから、よろこぶとよい」
相手の気持ちなど考えもしない人だから、憎たらしくずけずけと言う。
母親は情けなくて声も出ない。
何もかもが嫌になって、涙がこぼれそうになる。
そっと姫君の部屋に戻っていった。



