野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

常陸(ひたち)の国で育った姫君(ひめぎみ)のことを薫(かおる)の君(きみ)は気にしていらっしゃるけれど、あれからお手紙をおやりになることはない。
いくら亡き八(はち)の宮(みや)様のお子といっても、今は地方長官の継娘(ままむすめ)になっているのだから、薫の君とは身分が違いすぎるもの。
世間に知られたら非難(ひなん)されてしまう。

弁(べん)の尼(あま)の方から姫君の母親へは、たびたび薫の君のご希望をお伝えしている。
でも母親は、「姫君を恋人にしたい」と言われても本気だとは思えない。
<姫を探してくださったことはありがたい。しかし薫の君ではご身分が高すぎる。亡き八の宮様が実子(じっし)だとお認めくださっていれば、まだなんとかなったかもしれないけれど>
と悩んでいるの。