ドキドキ、ドキドキ。
嫌な心臓の音が耳の奥で響く。
ハルくんのお家、久しぶり。
玄関に入って、じっと下を見る。
「なに?」
「……なにも」
そこに――ない。
女の子の靴。
彼女のものらしき靴が、ない。
なんでか分からないけど、ものすごくホッとした。
胸の奥の重さが、少しだけ軽くなる。
靴を脱いで、綺麗に並べる。
これ、常識。
でも、手が震えていて、並べる動作がぎこちない。
階段にスクバを置いて、洗面所へ。
私よりも先にハルくんが手を洗ってる。一瞬外に出ただけなのに、ちゃんと洗うなんて偉いね。
ハルくんが終わったら、次は私の番。
手を洗うの、好き。私、案外潔癖なところあるから。だから、部屋の物も少ないの。
しっかりタオルで拭いて、2階へあがる。
ゆっくりね。走らないよ。
階段を上がる足音が、やけに響く。
ハルくんの背中がすぐ前にあって、 その距離が近いようで遠い。



