【完】ハルくんの、かくしごと。




「お幸せに」



ハルくんは、冷たく、ものすごく冷たい声でそう言って、私を置いて歩いて行ってしまった。



「は、ハルくんっ!」



追いかけようとした瞬間、後ろから腕を引っ張られる。



「柳くん…私、ハルくんと帰るの」



必死に言葉を絞り出す。



「なんで?櫻井の彼氏は俺だよ」



そ、うだけど…。


いや、そうだよ。柳くんの言ってることが正しい。

こういうところだよ。
紗里衣ちゃんに「甘い」って言われるのも、今まで振られてきた原因も。

それに、ハルくん―― 「俺離れしてくんない?」って言ってた。
その言葉が頭の中で何度もリフレインする。

ここでハルくんを追いかけたら、だめだよね。

うん、だめ。



結局、ハルくんを追いかけたい気持ちを押し込んで、柳くんと帰ることにした。

胸の奥がチクリと痛む。

ハルくん、怒ってるかも。
朝、私から『一緒に帰ろうね』って言ったのに。


――考えるのなし!やめようっ。


ブンブン横に首を振って、心の中のハルくんを追い出そうとする。



「柳くん、帰ろう」



そう言うと、柳くんは嬉しそうに笑った。