ちょっと、ちょっと? 私、この時間が楽しみなんだよ。紗里衣ちゃんが貸してくれる漫画を読む時間。
ただでさえ、柳くんに少し時間を奪われたんだからさ…。
「千秋って、人には厳しいくせに自分には甘いよね」
「…うっ」
紗里衣ちゃん、あいかわらず言葉に棘。いや、棘どころか鋭利な刃物。
胸にズキッと突き刺さる。でも、図星だから反論できない。
「私だってね?断らなきゃっていつも思ってるんだよ。でもさ…」
「いや、その話じゃなくて」
紗里衣ちゃんは私の言葉に被せるように遮る。
そうじゃないなら、どの話さ?
「幼なじみくんが女といるのは許せないのに、自分は彼氏作るんだね?ってこと!」
紗里衣ちゃんは、私から奪った漫画をパラパラと捲りながらそう言った。
「…違うよ。ハルくんのは彼女じゃないもん。だから、怒ってるの」
ハルくんがいつも連れ込んでるの、きっと彼女じゃない。
だって、同じ人を何回も見たことない。いつも違う人だから。
そういうのをやめてほしいの、私は。
「ハルくん、モテるんだから絶対すぐに彼女できるのに」
そう呟くと、紗里衣ちゃんは漫画を閉じて、ちょっと困った顔。
「それ、絶対幼なじみに言わないでね」
「うん…?」
なんでそんなこと言うのか分からない。
でも、紗里衣ちゃんの言うことはハルくんより絶対。
だから、言いつけはちゃんと守るよ。



