こんな顔、見たくないのに、私がそうさせた。
「…ち、あ。俺、話さないといけないこと、ある。だから、こうやって喧嘩するの、やめたい」
「…や、だ」
「ちあ。お願いだから、俺の話、聞いて」
「…っ、」
手を離して、私の顔色を伺ってくる。不安そうに見つめるハルくんの瞳。
「…わ、かった」
ハルくんの話ってなんだろう、怖い。 真剣な表情を見ると、なんとなく私が求めているものとは違うことを言われそうな気がして、「いや」ってまた、わがままを言ってしまいそうになる。
また、“もう、会いたくない”とか、”幼なじみやめよう”とかだったら、どうしよう。
2回もそんな言葉を聞いたら、きっと私は立ち直れない。
ハルくんも私のこと好きなのかも、なんて思っていたけど、 それはただの自意識過剰だったのかもしれない。
真剣な瞳が、私を試すように見つめてくる。
その視線に耐えられなくて、目を逸らした。
「……ちあ」
ハルくんが静かに名前を呼ぶ。
その声が、怖い。 でも、同時に、聞きたい。
「……俺、最初はさ、」
震える声のハルくん。
一瞬、口をつぐんで、私の手をぎゅっと握り締めた。
「ちゃんと話せるように、手繋いでたい」
「…いい、よ」
手も、震えてる。その震えが、私の心臓まで伝わってくる。
「最初は…ただ、好きだったんだ。小学生の頃は、ただ一緒にいることが楽しかった。 中学生になると、それが独占欲にかわっていった。ちあが、中2で初めて彼氏を連れて来たときのこと、忘れられない。 ショックで、眠れなくて、ずっと泣いてた。」
ハルくんの声は震えていて、でも止まらない。
その記憶を語るたびに、胸の奥に隠していた痛みが滲み出てくる。



