【完】ハルくんの、かくしごと。




ハルくんに「映画見ようよ」と誘われて、後ろから抱きあげられたまま、されるがままに家まで運ばれてしまった。

私に拒否権なんてものはない。
――というか、拒否はしないんだけど。

部屋に入って、少し気まずい空気のまま、ソファに座る。



「ハルくん、今日お母さんたち何時に帰ってくる?」

「今日遅い」

「じゃあ、泊まらせて」

「…いい、けど」

「ハルくん、ご飯担当ね」

「いつもそうだろ」

「…。」



沈黙。いつもと違う雰囲気が、部屋の中に広がっていく。

テレビの黒い画面に映るのは、私とハルくんの並んだ姿。 近すぎる距離に、心臓が落ち着かない。映画を見ようって言われたのに、再生ボタンを押す気配はなくて。



「…ちあ」



名前を呼ばれただけで、胸が跳ねる。

いつもの調子じゃない声。その響きに、息が詰まる。