「ねぇ、なんでこんなとこでしゃがんでんの。虫でもいたの?」
「…ふふっ」
思わず笑った瞬間、耳元でハルくんの笑い声も重なる。
あったかい息がかかって、少しくすぐったい。
でも、それ以上に――幸せで。
なのに、やっぱりちょっと苦しくて。
胸の奥がぎゅっと締め付けられて、また泣いてしまいそうになる。
「ちあ、家入ろうよ」
「…ん」
ぎゅっと後ろから強く抱きしめられたかと思えば、勢いよく、軽々しく持ち上げられた。
「きゃっ…!」
「ははっ、子どもみてー」
「ちょっ、恥ずかしいよ、ハルくんっ!」
「いいじゃん、このまま行こうよ」
むっとするも、ハルくんからはこの顔は見えていない。すぐ、子ども扱いする。
でも、クスクス笑ってる声をきくと、胸の奥がじんわり温かくなる。
恥ずかしいのに、嫌じゃない。むしろ、こうして笑い合える時間が、ずっと続けばいいのにって思ってしまう。
「…もう、ほんとに子ども扱いしないでよ」
そう言いながらも、頬が熱くなるのを隠せない。
ハルくんは、私を軽々と抱えたまま歩いていく。その背中越しに聞こえる笑い声は、昔から変わらない。
泣いているときも、困っているときも、必ずそばにいてくれた声。
「ちあ、軽い」
「もうっ…!」
頬が熱くなるのを隠せなくて、視線を逸らす。
雪の降る道を、二人分の足音が響いていく。
その音が、まるで17年分の思い出を重ねているみたいで―― 胸がいっぱいになった。



