「おま、えっ…ふざけんなよっ…」
真っ暗の中、左側から大好きな声が聞こえる。息が切れていて、きっと私が荻原くんといるのを見て走ってきてくれたんだと思った。
「は、るくん…」
「ちあ、大丈夫?」
多分、私の目を覆っていたハルくんの右手が離れて、その代わりにハルくんの顔で視界がいっぱいになる。
これだけ。これだけを、ずっと視界いっぱいにして見ていたい。
ハルくんの表情は焦りと心配で、私の無事を確認すると、すぐにクルッと振り返った。
「荻原、どういうつもり?」
ハルくんの低くて、トゲがあって、怒りを含む声。
あ、やばいかも。
そう思ったけど、もう遅くて――
ハルくんは荻原くんの胸倉を掴んで、後ろの壁に背中を押し付けた。
ドンッという音とともに、 「いった、」と荻原くんの小さい声。
まずい。ハルくんが、見たことないくらいにキレてる。
「荻原。お前、ちあに何したか分かってんの?」
「は?佐々木に関係ある?」
「あるよ」
「ないだろ。ただの幼なじみのくせに」
その瞬間、またドンッと背中を強く壁に押し付けられて、「いってーよ!」と荻原くんが言い返す。



