【完】ハルくんの、かくしごと。




家の最寄り駅に着いて、電車を降りる。ハルくんは、ずっと左手を握ってくれていた。安心する。でも、少しだけドキドキもする。

家の前に着くと、ハルくんは、



「…もう、バカなことすんなよ」



それだけ言って、私に背を向ける。
離れた左手が、一瞬で冷たくなった。

今、ハルくんから離れたら、だめだ。

そう思った瞬間、体が勝手に動いていた。



「…っ、ハルくん…!」



追いかけて、後ろからぎゅっと抱き着く。



「やだっ…今離れたら、ハルくんのこと一生恨む!」

「はぁ?」

「また、毎日家おしかけるからっ…!」

「…。」

「離れたくないっ、一緒にいてよっ…!」



今まで、数えきれないくらいのわがままを聞いてもらってきた。でも、こんなにも拒まれるのが怖くて、必死にすがりつくわがままは―― あの、駅で喧嘩したとき以来だった。

もしかすると、あの時よりも強いかもしれない。胸の奥から溢れ出す感情は、もう抑えられなかった。