【完】ハルくんの、かくしごと。




涙で滲む視界の中、必死に顔を上げる。 震える唇で、どうしても伝えたかった。



「…ハルくん、お願い…」



でも、ハルくんは一瞬、苦しそうに歪んだ顔をしてから、ふっと息を吐いた。白い息。

よく見ると、薄着だ。もしかして、私を追いかけて飛び出してきてくれたの?



「は、る、くん…寒い?」



ぽろぽろと、涙がこぼれる。



「…寒いから、帰ろう」



そう言って、ハルくんは雑に私の涙をグイッと拭いて、左手を握ってくれた。

歩きながら、ほんの少し後ろからハルくんを見つめる。
久しぶりの距離。久しぶりの体温。そして、ハルくんの右手。
全部が、愛しくて、苦しくて。



「…っ、うっ…」

「…ち、あ。泣かないで」



振り向きもせずに、声だけが落とされる。

ハルくんに引っ張られるように満員電車へ乗り込んで、人の波に押されながらも、また抱きしめてくれた。

結局、迷惑をかけてしまった。また、すがりついてしまった。

あれだけ消したいと思ったり、でも忘れたくないと思ったり、忙しかった心の揺れも―― ハルくんがそばにいてくれる、それだけで、なにも考えられなくなってしまう。