「佐々木、今、俺んちに千秋ちゃんといるんだけど」
荻原くんを、キッと睨みつける。
「荻原くん、やめ、て…」
震える声でそう言って、通話を切ろうと手を伸ばす。
でも、あっさり奪われた。
「駄目だよ、千秋ちゃん」
「…っ、ハルくんっ、通話切って!」
声が震える。 切ってほしいのに、切ってほしくない。 助けに来てほしいのに、迷惑はかけたくない。
矛盾だらけの心が、胸の奥でぐちゃぐちゃに絡まる。
泣きたくない。絶対に泣きたくない。
「佐々木、もしさ、俺が千秋ちゃんのこと襲ったら怒る?」
『……は?』
やだ。そんなこと、聞かないでほしい。
『…お前ら、付き合ってんじゃないの?』
「あー。そんなことも言ったかもね?付き合ってないよ。今も、たまたま会っただけだし。ねぇ、佐々木はどうするの?」
荻原くんの手が、頬から首、鎖骨、胸まで移動する。
「や、だっ…荻原くん、やめてっ…!」
やだ、怖い。
…もう、やだ。
『…か、ってにすれば?そもそも、付き合ってもないのに、のこのこ付いてったのあいつだろ』
冷たい声が、スマホから聞こえる。
分かってたのに。 ハルくんから離れたのは、私からで。 ハルくんは、私のことを幼なじみとも思ってないって、わかってたのに。
ズキッと痛んで、胸が凍り付く。



