【2.26公開】ハルくんの、かくしごと。




荻原くんは、通話ボタンをタップしてスマホをスピーカーにした。コール音が、部屋の空気を切り裂くように響き渡る。 映画は再生されたまま、画面の中では賑やかな音が流れているのに、私の耳には遠く感じた。

ハルくんは、多分出ないと思う。
何度もコール音が続いて、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
出ないでほしい。

何回かコール音が続いて、もうそろそろ切れると思ったとき――



『…なに?』



ぶっきらぼうで、不機嫌そうな声が、スマホから響いた。



「…っ、」



ねぇ。なんで、出たの。ダメだよ、ハルくん。出ちゃだめ。

胸の奥が、ぐっと締めつけられる。 聞きたくなかったのに、聞いてしまった。声だけで、涙が溢れそうになる。



「佐々木、今どこにいんの?」



荻原くんの声が、部屋に響く。
一瞬の沈黙。
そして――



『…荻原と、いんの?』



スマホのスピーカーから流れるハルくんの声は、冷たくて、不機嫌そうで。

でも、私にとっては懐かしくて、痛くて、どうしようもなく大切だった。