「私、やっぱり、ハルくんがいないとダメみたい。ずっとハルくんと一緒にいたくて、何よりもハルくんのことが大切。今はもう、好きだなってすんなり思えるし、好きって気持ちよりも、もっと大きい気持ちもずっと前からあったの。それなのに、何にも気づかなくてさ、もう全部遅いんだけど…未だに辛いし、考えちゃうし、泣いちゃうし、17年も一緒にいたけど、意外と忘れてくものなんだなって思ったんだよね…。でも、記憶が薄れていっちゃうのが、どうしても嫌だった。最近は、辛い記憶しかないけど…それでも、忘れたくないの。この先もきっと、私にはハルくん以上に好きな人に出会えないし、出会いたくない、とも思う。荻原くんといたら、楽しくて、ドキドキもして、これが恋なんだろうなって思ったこともあったし、そう思おうともしたよ。でも、やっぱり無理だったの。荻原くんも、恋をしたことがないって言ってたから、私が教えてあげれたらよかったんだろうけど、それも、できなかった。私が言っても、何一つ説得力はないけど…荻原くんには、幸せになってほしいよ。ちゃんと、好きな人を作って、その人だけを大切にしてほしい」
店内のBGMが小さく聞こえる。窓の外、通る車を見ながら、荻原くんと一緒に、カラカラとストローを回す。
私が言える立場じゃないけど。
なんだか、柳くんの言ってた気持ちがなんとなくわかる気がするなぁ~と、しみじみ。
「う~ん、やっぱ、分かんないな」
荻原くんがそう言って、ケーキを口に運んだ。



