「ちっあきちゃ~ん」
ひょこっと、廊下から顔をのぞかせて現れた荻原くん。
「ねぇ、放課後ひま?」
「暇だよ~」
「ちょっと付き合ってよ」
「いいよ」
荻原くんはニッと笑って、私から漫画に視線をずらした。
「え、最終巻?」
帯に、デカデカとそう書いてある。
「俺、負けた?」
荻原くん、当て馬キャラのことを、とうとう“俺”って言いだした。
「負けたよ、盛大に」
紗里衣ちゃんがそういうと、荻原くんは「悲し~」なんて笑ってる。
チャラチャラした人よりも、クールな人が選ばれる。しかも、幼なじみだったら尚更。相場そうだって、決まってるもん。
漫画の中、だったら、ね。
でも、漫画とはだいぶ違った。好きになったのは、私のほうだった。そこから既に違っていた。
ハッピーエンドなんて、中々ない。物語みたいに綺麗に収まることなんて、現実にはほとんどない。
「千秋ちゃん、放課後、教室で待っててね」
「うん」
荻原くんは、手を振っていってしまった。その背中を見送りながら、私は最終巻を1ページめくった。



