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「千秋、最新刊読むー?」
「うん~、ありがとっ」
「また昨日の夜、本屋ハシゴしたんだよね」
「紗里衣ちゃん、さすがだね」
紗里衣ちゃんの、勲章。やっと、ここまできた。
終わってしまう。少女漫画、最終巻。
この巻で、決着がつく。ヒロインのことが好きな幼なじみと、チャラい当て馬キャラ。
「千秋、最近荻原くんとどう?」
「……え~?」
紗里衣ちゃんは、私が毎日のように泣いていたから、ハルくんの話題は出さないようになった。
その代わりに、荻原くんの話。 紗里衣ちゃんは、未だに私と荻原くんがお似合いだと思っているらしい。
「荻原くんはね~、普通に友達としていいよね~」
荻原くんとは、放課後も、休日も何度か会っている。
笑って話せるし、気を遣わなくてもいい。
でも――。
荻原くんには、私の本当の気持ちは話していない。でも、なんとなく気づいていると思う。
それもあってか、荻原くんとはキスもしなくなった。手もつながなくなった。
ただ、一緒にいるだけ。遊ぶだけの、普通の友達になった……と思う。
普通の友達になる前は、友達とはしないことをしていたわけだから。
荻原くんには、ハルくんのことを話したほうがいいよね――そう思いつつ、ずっと話せていない。
ハルくんの話題を出そうとすると、なんとなく避けられる感じがする。面倒くさくて聞きたくないのかもしれない。
はあ、と机に突っ伏して、ため息をついた。
「千秋、幸せ逃げちゃうよ」
「う~ん……もう、いいよ~」
ハルくんがいないと、幸せになれない。 ハルくんがいない幸せなんて、いらないもん。



