「千秋ちゃん、急にどうしたの」
「ぜった、い……ぜったいに、忘れさせてくれる?」
目の奥が熱い。
荻原くんは「大事にするよ」なんて、誰にでも言ってそうなセリフを囁いた。
早く、今すぐにでも、忘れたい。
そんな私の思いまでも感じ取ったのか、信号が青に変わり、周りの歩行者が歩き出したとき――
荻原くんは、私にキスをした。
人生で3回目。ハルくん以外とは、初めてのキス。
もっと緊張するとか、荻原くん相手だとドキドキするものだと思ってた。
でも、全くそんなことはなかった。
甘くも、苦くもなく、ただただ無味。
キスって、本来こんなものなの?と、思ってしまう。
それなのに、胸だけは無性に痛くて。
さっさと、消えてしまいたかった。



