「でも幼なじみくんが優しくするの、千秋だけだと思うよ」
「え?」
思わず声が裏返る。
「思い出してみなよ。うんざりするほど私に話してきたでしょ。 手繋いでくれるとか、抱っこしてくれるとか」
ズイッと紗里衣ちゃんの綺麗な顔が、視界いっぱいに広がる。近すぎて、思わずたじろぐ。
…まぁ、確かに? 紗里衣ちゃんの言うことも、一理ある。
よくよく考えてみれば―― いつもハルくんは、私のわがままをなんだかんだ言って受け入れてくれている気がする。
電車に乗るときは、手を繋いでくれるし。
この前なんて。
勝手にハルくんのお部屋にお邪魔した挙句、「疲れて歩けないから、抱っこして」なんてほざいた私を。
ため息をつきながらも、「はいはい」って抱っこして。隣のお家まで送ってくれた。
タイミングよく、お母さんが帰ってきて。
「あんた、遥くんに何させてるの!?」
って怒られたけどね。
ハルくん、外面いいから。 私のお母さんに対しても、「このくらい大丈夫ですよ」なんて。
余所行きの笑顔を振りまいてた。
……ほんと、ずるい。
私には冷たいくせに。大人の前では、ちゃんと“いい子”を演じられる。
でも、そういうところも含めて。なんだかんだで、私はお世話になってる。
他にも――いろいろと。
思い返せば、助けてもらったことばかり。口では文句を言いながらも、 結局は私のわがままを受け入れてくれる。
それがハルくん。



