初めてだった。
「付き合おう」って言われて、こんなにドキドキするの。
しかも、「好き」って言われたわけじゃない。それっぽく言ってるけど、かなりクズな発言。
私の周り、こんな人間しかいない気がする。
「…荻原くん、クズ」
「そうだよ」
しかも、開き直ってるタイプ。堂々と笑ってる。
「でも、私はもっとクズ」
そう言った瞬間、頬を撫でていた荻原くんの手が形を変えて、きゅっと優しめにつねってきた。
「ちょっと?」
「千秋ちゃんは、クズじゃないよ。俺とは違う」
なにが? なにが違うんだろう。
クズのタイプは違うかもしれないけど、私だって立派なクズだ。
「全部、俺のせいにしていいからさ。ちょっとだけ、俺に時間ちょうだいよ」
荻原くん、そう言って――私の頬にチュッて。軽く。ほんとに、一瞬。
触れるか、触れないか、ギリギリのラインで。
「…きょ、許可してない」
思わず、頬にパチンッと勢いよく手を当ててしまった。
なんで。
なんで、自分で自分を叩いてるの。
頬に残る熱が、心臓の音をさらに大きくする。
ドクン、ドクン。 耳の奥まで響いて、落ち着かない。
荻原くんは、悪びれる様子もなく、むしろ楽しそうに目を細めていた。



